金融工学

S&P500の中央値はどう変化するか?幾何ブラウン運動による中央値の変化を示す。

投稿日:2021年7月6日 更新日:




 

過去記事では資産の推移を計算するときに平均値を使うのはミスリードする可能性があると紹介しました。

じゃあ、平均値ってなんぞや?要は資産価格は平均値の周りにぐにゃーと広がるように分布をもつということ。

この分布は広がるので、実は資産が平均値を超える確率は下がっていきます。

例えばS&P500の場合、1年後に資産価格が平均値を超える確率はほぼ50%ですが、30年後に資産価格が平均値を超える確率は30%まで下がります。

平均値だけに着目すると、例えば30年後のリターンの平均値は8倍です、なんて言われると高い確率で8倍になるような気がします。50%行くような。

でも平均値は優秀なリターンがあるとそれに引きずられて高く出る傾向にあります。日本人の平均年収が400万円と言われても「実感がない」と騒がれるのは1000万円超えとかの高年収のひとに引きずられて平均値が上がるからです。

こういう場合は中央値で見た方がいいです。中央値とはデータをとって並べたときに中央にくる値。リスク資産のリターンであれば確率分布を下限から積分したときに1/2となるような値。

Sponsored Link



 

というわけでS&P500の平均値と中央値の推移を計算してみます。指数は幾何ブラウン運動すると仮定します。詳細は過去記事参照。

米国S&P500を平均リターン7%・リスク20%の幾何ブラウン運動でモデル化する理由

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

 

下のグラフが結果。

時間が経過するほど乖離していますね。投資期間を30年とするとリターン平均値は8倍です。でも中央値は4倍。

理由は確率分布の形状です。リターンの確率分布は時間が経てばたつほど高リターン側に裾が形成されて広がりをもちます。その結果乖離していくんです。

ちなみにレバレッジをかけるとこの乖離はさらに広がります。レバレッジをかけすぎると中央値自体が下がるため超危険。理論上ベストなレバレッジは1.75倍です。それも過去記事参照。

https://chandraroom.com/modern-portfolio-stock-leverage

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

米国株50%+金50%ポートフォリオでリスクを下げられるか?

  myINDEXというサイトを過去記事で紹介しました。myINDEXでは「みんなのポートフォリオ」という機能でいろんなポートフォリオ (リスク資産の組み合わせ)のリスク・リターンを見ること …

積立投資は「投資金額の時間発展の総和」と捉えると分かりやすい。

  一括投資と積立投資の違いは何か? 前者は手持ちの資金を初年度に一括で投資すること。後者は手持ちの資金を数回に分けて投資することです。これだけ読んでもふ~んとしか思いません。では図示してみ …

ブラック・ショールズ・モデルを一番分かりやすく書いた本を紹介する。

私が大学時代から愛読している本に長沼伸一郎氏の直観的方法シリーズがあります。 久しぶりに本棚から引っ張り出して「経済数学の直観的方法(確率・統計編)」を読んでいたんですが、唸りましたね。とにかく難しい …

リスク資産の最適な割合を計算するためのサミュエルソンの割合を説明する。

  前回の続きです。 株などのリスク資産を持っているとき、自分のポートフォリオ全体でリスク資産を何%にすべきか? そう問われれば「自分のリスク許容度に見合った割合にすべき」というのが教科書的 …

なぜ全てのリスク資産の時価総額加重平均が最適なポートフォリオなのか?を説明する。

  数式がたくさん出てきます。興味ない方はトップページにエスケープしてください。   なぜ時価総額加重平均が最適なポートフォリオなのか? これは現代ポートフォリオ理論から導き出され …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ