金融工学

【SPXL】S&P500に3倍レバレッジをかけて中央値が下がることが問題なのか?の定量的な説明

投稿日:2021年6月3日 更新日:




 

読者様からレバレッジに関する過去記事について質問を頂きました。

記事の内容を要約すると、「S&P500の最適レバレッジは1.75倍。それを越えるレバレッジをかけるとリターンの中央値が下がる」です。下が頂いた質問です。

投資の判断(レバレッジをいくつにするか)を平均値はなく中央値で評価するのは,正しい数学を捨てて,感情を優先させているような気がするのですが,その点についてchandra11さんのご意見をお聞かせください.

例えば,S&P500に30年間投資する時,レバレッジいくつにするかを決める場合,平均値で考えればレバレッジ3の方が良くて,中央値で考えればレバレッジ1.75の方が良い,ということは記事で説明していただきました.最終的に最も資産が増えている確率が高いのは,やはりレバレッジ3のケースだという理解です.

私が理解できないのは,最も資産の増える可能性のある戦略である「平均値狙い/レバレッジ3」ではなく,「中央値狙い/レバレッジ1.75」戦略を取ることによって,得られるものは何だろう,ということです.

「損失回避の法則」に従って得られる心の平穏だけなのでしょうか? だとしたら,歯を食いしばって感情に逆らって,「平均値狙い/レバレッジ3」戦略を採用した方が良いような気がします.

5/21の記事に『リスク許容度が高ければ一時期の元本割れなんて気にしないでしょうが、ビビりの人間が流行にのってSPXL買うのはお勧めできません。』と書かれていますので,「ビビりの人間」でなければ,「平均値狙い/レバレッジ3」の方が良いという理解です.(ちなみに,私は資産の90%以上がCUREとSPXLのリスクジャンキーです)

 

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私は下のように回答しました。過去記事と重複する箇所もありますが、より嚙み砕いた形で回答しました。

====引用始め===

質問者様の回答に簡潔に答えるならば、「投資判断は(1)ポートフォリオの確率分布と(2)リスク許容度に基づいて行う」というのが私の考えです。

レバなしとレバ3倍では時間変化する確率分布の形状が変わります。確率分布が異なれば、あるリターン以上(または以下)をとる確率も変わります。

S&P500に20年間投資することを考えます。
レバなし:元本割れ確率12%、リターンが3倍を超える確率:46%
レバ3倍:元本割れ確率43%、リターンが3倍を超える確率:35%

これを見ておかしいと思いませんか?元本割れ確率が低くてリターン3倍を超える確率が高いレバなしの方が明らかに良く見えます。平均値はレバ3倍の方が高いのに。

理由は確率分布の形状にあります。レバ3倍はリターンが高い方に裾がながくなるからです。そこでリターンが20倍を超える確率を見てみると:
レバなし:1%
レバ3倍:5%

つまりレバ3倍はリターンが20倍や30倍などの確率が、レバなしに比べてかなり高いために、「平均値」を比べるとレバなしよりも高くなるのです。

それでも注意して頂きたいのは、リターンが20倍を超える確率がレバなし (1%)よりも5倍も高いとしても、絶対値として見ればたった5%しかない、という点なのです。このように異常に高いリターンがたった数%でも平均値としては高い値が出てしまうので、安易に平均値だけを比較して投資するべきではないと思っています。

では平均値以外で使える指標は何かというと、中央値です。中央値以上のリターンを得る確率は50%であるため、平均値よりは安全サイドの評価ができます。
平均値のように、一部の超高リターンの存在に引きずられるということはありません。

>投資の判断(レバレッジをいくつにするか)を平均値はなく中央値で評価するのは,正しい数学を捨てて,感情を優先させているような気がするのですが、

「正しい数学」がよく理解できませんでしたが、おそらく「投資判断は平均値で評価するのが定石」というニュアンスで仰っているのだと理解してます。
上述の通り、平均値は指標のひとつに過ぎないというのが私の考えです。見るべきは「確率分布」で、その形状を理解する指標が平均値と中央値です。

20年投資して、元本割れ確率43%を許容してでも、たった5%のリターン20倍超えを狙いに行くリスク許容度があれば、レバ3倍をかけるのは合理的です。
逆に、たった5%のために元本割れ43%なんて割に合わないと考えるのであれば、レバなしとすべきです。

以上が「投資判断は(1)ポートフォリオの確率分布と(2)リスク許容度に基づいて行う」の理由です。

====引用終わり===

 

返信を書いているうちに私の思考を整理することができました。質問ありがとうございました。

 

関連記事:

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

S&P500にレバレッジ3倍かけると元本割れ確率の減少が鈍い。【SPXL】【レバレッジETF】

 

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執筆者:


  1. アバター green より:

    毎回データを基にした記事で大変参考にさせていただいております。
    ありがとうございます。

    今回の記事を読んで思ったことなのですが、レバレッジ3倍を積み立てしていく戦略はどうでしょうか?
    数学に疎いので自分の感覚ですが、単発の購入だと中央値と平均値が乖離するとしても、積立し続ければ中央値が平均値に近づいていくのではと考えました。
    くじ引きで圧倒的に当たりが少なくても、試行回数を増やせば確率通りに当たりを引けるのではというイメージです。

    御意見お聞かせいただければ幸いです。

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。

      >単発の購入だと中央値と平均値が乖離するとしても、積立し続ければ中央値が平均値に近づいていくのではと考えました。

      一括でなく定期的に積み立てる方法でも、中央値と平均値の乖離を防ぐことはできません。
      一例を挙げると、
      0年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
      1年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
      2年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
      3年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
      ・・・
      が続き、最終的な投資額は各年度のトータルになります。これをみて分かる通り、どの年度に投資しても乖離は止まらないのでそれをトータルしても乖離は止められません。

      ただし、乖離は時間経過とともに大きくなるので、一括に比べて乖離の度合いは減らせます。
      例えば30年間積立投資したとして、29年目の投資分はたった1年しか運用していないことになります。
      したがって、30年目に全部売却すれば29年目の投資は実質1年間の投資になるので、一括投資よりは安全な投資になります。

      • アバター green より:

        御返信ありがとうございます。

        例を挙げていただいて理解できました。
        レバレッジ3倍のメリットそのままにデメリットを打ち消すという夢のような話はやはり夢だったということですね…。

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