十分な資金が手元にあって何か投資をしたいとき、何に投資をするべきか?それをどのように意思決定するべきか?
例えばある企業が太陽光発電事業に参入するとして2つのケースから選ぶ必要があるとします。
ケース1: 1億円投資して20年間毎年600万円の利益を得る。
ケース2: 5,000万円投資して15年間毎年400万円の利益を得る。
どちらのケースに投資すべきかはIRR (内部収益率)を比較することで意思決定できます。内部収益率とは「利回り」のこと。
ケース1のIRRは1.8%。ケース2のIRRは2.4%。だからIRRが大きいケース2に投資したほうが効率的だと言えるのです。
同じ考えは株式投資にも使えます。
成長銘柄に投資するか高配当銘柄に投資すべきか?これもそれぞれのIRRを計算して比較してみればよい。
年率5%で株価が上昇する成長銘柄のIRRは計算するまでもなく5%。ただし売却時に利益の20%に税金がかかることを考えると、IRRはそれより少しだけ小さい4.2%になります。
成長銘柄 (年率5%, 配当ゼロ): IRRは4.2%
次にゼロ成長の高配当銘柄のIRRを計算してみます。初年度に6,000万円で購入、株価は一定で毎年5%の配当を受領、10年目に全ての株式を現金化するとします。配当には20%の税金を考慮。このときのIRRは4.0%になります。
高配当銘柄 (年率0%, 配当5%): IRRは4.0%
面白いのはここからです。毎年2%株価が衰退している高配当銘柄のIRRを考えてみます。初年度に6,000万円で購入、株価は毎年2%減少するが、毎年5%の配当を受領、10年目に全ての株式を現金化するとします、配当には20%の税金を考慮。このときのIRRは1.9%になります。
高配当銘柄 (年率-2%, 配当5%): IRRは1.9%
まとめるとこうなる。
これを見れば、例え高配当でも株価が下がっていくものに投資することがとても非効率な投資であることが分かります。
ちなみにこの高配当(マイナス成長)銘柄のIRRを5.0%まで上げるには配当率を9%まで引き上げる必要があります。
つまりこういうことです。株主は「何に投資すべきか」をIRRで評価する。成長銘柄のIRRは高く、低成長銘柄のIRRは低い。だから低成長銘柄は株主を引き留めるために増配せざるを得ない。なぜならそうしないと、IRRが成長銘柄よりも低いままだから。
ちなみにこのマイナス成長銘柄は配当率が2.5%のときのIRRは0%となります。さて配当はプラスだからといってこの銘柄に投資するでしょうか?答えはノーですね。これに投資するぐらいなら日本国債に投資したほうがマシです。国債のIRRは0.02%。しかもリスクはゼロなので。
IRRは誰でも簡単にエクセルで計算できます。上の表のようにキャッシュフローを年度毎に並べてIRR関数で囲ってやるだけです。
株式投資だろうが太陽光発電だろうが不動産投資だろうが、年度毎のキャッシュフローが分かればIRRは簡単に計算できます。そしてこのIRRを比較することで、最も効率がよい投資方法を選ぶことができるというわけです。これは便利だ ww
もう一言付け加えると、IRRによる比較はとてもフェアだということです。純粋にキャッシュフローをもとに計算するので、支払う税金や借りた金の返済など引かれるものもちゃんと考慮してはじき出すのがIRR。
キャッシュフローに基づいたIRRを使えば、やれ税金を考えてないとかやれ手数料を考えていないなどの手落ちが無くなります。その結果、複数の投資手法をApple to Appleで比較できるというわけです。
まあ企業があるプロジェクトに投資するかを決めたりするのにIRRを使うので、フェアなのは当然ですが ww
参考:
道具としてのファイナンス
私はこれで勉強しました。私が知る限りIRRを最も簡単に学べる本。しかも自分で手を動かして使えるようになる。Amazonのレビュー評価も異常に高い。
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