金融工学

米国S&P500を平均リターン7%・リスク20%の幾何ブラウン運動でモデル化する理由。

投稿日:2020年12月7日 更新日:




 

私のブログでは米国S&P500を年率平均リターン7%、リスク20%と仮定して将来のトータルリターンや元本割れ確率を分析しています。

この年率リスクとリターンは過去の実績から計算しています。1928年~2020年の年率平均リターンをヒストグラムにしたのが下のグラフです。データの数は約23,000。なんとなく正規分布っぽく見えます。

このヒストグラムを正規分布でフィッティングしてはじき出した値がリターン7%、リスク20%というわけです。

 

Sponsored Link



 

リスク7%、リターン20%というのはあくまで過去の実績値です。将来の株価もこの値を元に幾何ブラウン運動すると仮定すればトータルリターンなり元本割れ確率を計算できるわけでうす。幾何ブラウン運動の式は下を参照のこと。

ここが重要な点です。将来の予測には「過去の実績値をもとにはじきだした傾向が将来も継続する」という仮定がはいっているわけで、この仮定が破綻するならば、いくら幾何ブラウン運動の株価変動モデルをこねくりまわしたところで、机上の空論だというわけです。

それでも私がリスク7%、リターン20%の幾何ブラウン運動にこだわる理由は筋が通っているからなのです。株価は人間の心理をはじめとした限りなく多くの要因によって変動します。多くの要因がそれぞれどのように株価に影響するのか、その関係性を解きほぐして株価を予測するのはもはや不可能。それならば過去の実績から株価変動の傾向をとらえてモデル化するのは実務的な観点からは合理的です。

それでも「7%/20%で将来を予測するのは信用ならん」と言うのであれば、他にもっと良い方法はあるのか?と問うてみればいいのです。筋が通っていて素人でも計算可能な方法はあるのか?あればそちらをテイクすればいいでしょう。

当然このモデルより将来を予測するモデルは存在するかもしれません。でも、それが素人にとって難解で専門家に高い金を払わないと手に入らない物であるならば、それはやはり実用的な観点からは有用だとはいえないでしょう。

 

 

関連記事:

米国S&P500の最適なレバレッジが1.75倍の理由。だからSPXLの3倍は高すぎる

投資で過去のリスクとリターンで分析することに批判があるが、そこは割り切るしかないと思う理由

 

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


  1. アバター Chapter 11 より:

    お世話になります。毎回有益な記事を作成いただき、ありがとうございます。
    多くのことを学ばせていただいております。

    さて、この7% / 20%の算出ですが、これはインフレ率を控除した過去の実質リターンをベースに計算されたものでしょうか、それともインフレ率込の名目リターンをベースしたものでしょうか。足元でインフレ率が上昇しており、今後の投資を考える上で、正しく数字の前提を理解しておきたく考えております。

    お時間あられる際に、ご助言いただけると、とても嬉しいです。

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。
      インフレ率は考慮していません。
      S&P500のポイントから推定しています。

      • アバター chapter 11 より:

        ご確認ありがとうございます。ということは、名目リターンということで理解いたしました。
        お礼の返信遅くなってしまったこと、申し訳ありませんでした。
        これからも、示唆に富む貴ブログ、とても楽しみにしております。

        • chandra11 chandra11 より:

          返信ありがとうございます。
          これからもブログを読んでいただければ幸いです。

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

なぜリスクが大きいとトータルリターンが低下するのか?幾何ブラウン運動で定量的に説明する。

    株価の変動は幾何ブラウン運動でモデルできることがよく知られています。 幾何ブラウン運動はこのブログの記事で何回も出てきてますが、あえて基礎に立ち返ってみます。すると株価変動 …

株価はどう動くか?幾何ブラウン運動の株価変動モデルを説明します。

  株価はランダムな動きをすると仮定して構築されたのが現代ポートフォリオ理論。難しそうな微分積分の式を見れば怖気づきますがミソだけ押さえれば理解するのはさほど難しくありません。 株価が「ある …

なぜS&P500 3倍レバレッジが暴落に弱いかを定量的に説明する。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で紹介した、暴落を取り入れた幾何ブラウン運動のシミュレーションをS&P500の3倍レバレッジに適用してみます。 ちなみに私が知る限り、S&P500 3倍レバレッジ …

ゼロで死ぬためのインデック投資法 (入金と売却の具体的な方法)

  前にDIE WITH ZERO (ゼロで死ぬ)という本が話題になりました。「人生が豊かになりすぎる究極のルール」という薄っぺらい副題を見て「あっ・・・そういうのいいです・・・」と立ち読み …

「72の法則」をリスク資産に適用するのは正しいのか?リターンの確率分布の観点から検証。

  資産運用するときに「72の法則」は元本を2倍にするための投資期間を計算できる法則です。以下は野村証券のサイトから引用。 金融商品に投資する際に、金利の複利効果により元本を2倍にする場合の …

都内在住の30代サラリーマンです。資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に資産1億円を超えました。

このブログではインデックス投資の利点、運用シミュレーションや金融工学の記事を公開していきます。

趣味はミニベロ

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ