金融工学

3倍レバレッジを一括の代わりに積立投資にしても平均値と中央値の乖離を防げない理由。

投稿日:2021年6月8日 更新日:




 

読者様からレバレッジに関する過去記事について質問を頂きました。

記事の内容を要約すると、「S&P500の最適レバレッジは1.75倍。それを越えるレバレッジをかけるとリターンの中央値が下がる」です。下が頂いた質問です。

今回の記事を読んで思ったことなのですが、レバレッジ3倍を積み立てしていく戦略はどうでしょうか?
数学に疎いので自分の感覚ですが、単発の購入だと中央値と平均値が乖離するとしても、積立し続ければ中央値が平均値に近づいていくのではと考えました。
くじ引きで圧倒的に当たりが少なくても、試行回数を増やせば確率通りに当たりを引けるのではというイメージです。

御意見お聞かせいただければ幸いです。

 

Sponsored Link



 

私は下のように回答しました。

====引用始め===

>単発の購入だと中央値と平均値が乖離するとしても、積立し続ければ中央値が平均値に近づいていくのではと考えました。

一括でなく定期的に積み立てる方法でも、中央値と平均値の乖離を防ぐことはできません。
一例を挙げると、
0年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
1年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
2年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
3年目に100万円投資:時間が経つにつれて中央値と平均値は乖離、
・・・
が続き、最終的な投資額は各年度のトータルになります。これをみて分かる通り、どの年度に投資しても乖離は止まらないのでそれをトータルしても乖離は止められません。

ただし、乖離は時間経過とともに大きくなるので、一括に比べて乖離の度合いは減らせます。
例えば30年間積立投資したとして、29年目の投資分はたった1年しか運用していないことになります。
したがって、30年目に全部売却すれば29年目の投資は実質1年間の投資になるので、一括投資よりは安全な投資になります。

====引用終わり===

 

質問ありがとうございました。

参考:↓が確率分布の変化。

 

 

関連記事:

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

なぜS&P500に3倍レバレッジをかけて中央値が下がることが問題なのか?の定量的な説明【SPXL】

 

Twitterでブログ記事の更新通知を受け取れます:

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

積立投資の意外な盲点。投資期間後半で投資した分は元本割れ確率が高い。

  以前の記事でサラリーマンが株式投資するなら、一括投資よりも積立投資にならざるを得ないという話をしました。理由は簡単で会社から受け取る給料の中から投資資金を捻出するのだから、毎月数万円、ま …

レバレッジETFの減価問題はなぜ嘘くさいのかを定量的に説明する。

  レバレッジETFは減価リスクがあるから危険と言われることがあります。 超簡単な例でいうと、株式指数が10%上昇し翌日10%下落した場合: レバなし:1.1 x0.9= 0.99 3倍レバ …

「72の法則」をリスク資産に適用するのは正しいのか?リターンの確率分布の観点から検証。

  資産運用するときに「72の法則」は元本を2倍にするための投資期間を計算できる法則です。以下は野村証券のサイトから引用。 金融商品に投資する際に、金利の複利効果により元本を2倍にする場合の …

S&P500 2倍レバレッジは暴落したらどうなるか説明する。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で、暴落を取り入れた幾何ブラウン運動のシミュレーションをS&P500のレバなし、2倍レバ、3倍レバで行いました。 各ケースのシミュレーション結果をバラバラの記事で紹介した …

レバレッジはリターンの中央値を下げる。3倍レバレッジが危険な理由を定量的に説明する。

  前回の記事では株価がランダムな動きをすると仮定すると、リターンの確率分布が対数正規分布に従うと紹介しましした。 ではランダムな動きをする株にレバレッジを加えるとどうなるか見てみます。レバ …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ