過去記事でS&P500の最適レバレッジは1.75倍と紹介しました。これはS&P500の720の法則を適用した場合のケースです。
中央値はL=1.75のときに最大値をとることが分かります。平均値はレバレッジを大きくすればするほど大きくなるが、中央値はレバレッジを1.75倍以上にすると小さくなる。
つまりこういうことです。レバレッジをかけると資産価値の対数正規分の端っこのほうが立ち上がってくる。その結果、高いリターンを得る確率が大きくなるためにリターンの平均値も大きくなる。レバレッジを高めるほど、そんな「一握りの」高リターンのためがますます平均値が引き上げる。だからレバレッジが大きいほど中央値が下がる。
過去の米国株式インデックスを参考に収益率7%・標準偏差20%としてLに対する平均値と中央値をプロットしてみたのが下のグラフです。
この記事を読んだ読者様から、米国株の成長率が鈍化した場合に最適レバレッジがどう変わるのか知りたいとコメントを頂きました。
確かに今後も年平均7%で成長を続ける保証はありません。じゃあそれが3%なのか4%なのか?リスクは20%のままでよいのか?という話になるんですが、
そんなことは誰にもわからないわけで、最適レバレッジに興味がある各位が「リスクは●%、リターンは●%」と予測して計算してみればいいと思います。
というわけで早見表を作成しました。
赤く塗っているのがリスク20%・リターン7%。このとき最適レバレッジは1.75倍。
もしも、リスクは20%のままでリターンは4%に下がると予想するのであれば、最適レバレッジは1.25倍だと分かります。
実際にポートフォリオを組むときに1.25倍を狙って複数ファンドを買うのは面倒くさいです。1.25倍ならほぼ1とみなしてレバレッジはけかないと判断するのが妥当でしょうね。
例えば1.75倍を狙うなら、過去記事で紹介したようにSPRDとSPXLを10:6で混ぜれば作れますが、面倒くさいので誰もやらないでしょう。
参考:
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リターン9%と10%のところ計算間違ってないですか?
ありがとうございます。間違ってたので差し替えました。
投資の判断(レバレッジをいくつにするか)を平均値はなく中央値で
評価するのは,正しい数学を捨てて,感情を優先させているような
気がするのですが,その点についてchandra11さんのご意見をお聞かせ
ください.
例えば,S&P500に30年間投資する時,レバレッジいくつにするかを
決める場合,平均値で考えればレバレッジ3の方が良くて,中央値で
考えればレバレッジ1.75の方が良い,ということは記事で説明して
いただきました.最終的に最も資産が増えている確率が高いのは,
やはりレバレッジ3のケースだという理解です.
私が理解できないのは,最も資産の増える可能性のある戦略である
「平均値狙い/レバレッジ3」ではなく,「中央値狙い/レバレッジ
1.75」戦略を取ることによって,得られるものは何だろう,という
ことです.「損失回避の法則」に従って得られる心の平穏だけなので
しょうか? だとしたら,歯を食いしばって感情に逆らって,「平均値
狙い/レバレッジ3」戦略を採用した方が良いような気がします.
5/21の記事に『リスク許容度が高ければ一時期の元本割れなんて気に
しないでしょうが、ビビりの人間が流行にのってSPXL買うのはお勧め
できません。』と書かれていますので,「ビビりの人間」でなければ,
「平均値狙い/レバレッジ3」の方が良いという理解です.
(ちなみに,私は資産の90%以上がCUREとSPXLのリスクジャンキーです)
コメントありがとうございます。
質問者様の回答に簡潔に答えるならば、「投資判断は(1)ポートフォリオの確率分布と(2)リスク許容度に基づいて行う」というのが私の考えです。
レバなしとレバ3倍では時間変化する確率分布の形状が変わります。確率分布が異なれば、あるリターン以上(または以下)をとる確率も変わります。
S&P500に20年間投資することを考えます。
レバなし:元本割れ確率12%、リターンが3倍を超える確率:46%
レバ3倍:元本割れ確率43%、リターンが3倍を超える確率:35%
これを見ておかしいと思いませんか?元本割れ確率が低くてリターン3倍を超える確率が高いレバなしの方が明らかに良く見えます。平均値はレバ3倍の方が高いのに。
理由は確率分布の形状にあります。レバ3倍はリターンが高い方に裾がながくなるからです。
そこでリターンが20倍を超える確率を見てみると:
レバなし:1%
レバ3倍:5%
つまりレバ3倍はリターンが20倍や30倍などの確率がレバなしに比べてかなり高いために、「平均値」を比べるとレバなしよりも高くなるのです。
それでも注意して頂きたいのは、リターンが20倍を超える確率がレバなし (1%)よりも5倍も高いとしても、絶対値として見ればたった5%しかない、という点なのです。
このように異常に高いリターンがたった数%でも平均値としては高い値が出てしまうので、安易に平均値だけを比較して投資するべきではないと思っています。
では平均値以外で使える指標は何かというと、中央値です。中央値以上のリターンを得る確率は50%であるため、平均値よりは安全サイドの評価ができます。
平均値のように、一部の超高リターンの存在に引きずられるということはありません。
>投資の判断(レバレッジをいくつにするか)を平均値はなく中央値で評価するのは,正しい数学を捨てて,感情を優先させているような気がするのですが、
「正しい数学」がよく理解できませんでしたが、おそらく「投資判断は平均値で評価するのが定石」というニュアンスで仰っているのだと理解してます。
上述の通り、平均値は指標のひとつに過ぎないというのが私の考えです。見るべきは「確率分布」で、その形状を理解する指標が平均値と中央値です。
20年投資して、元本割れ確率43%を許容してでも、たった5%のリターン20倍超えを狙いに行くリスク許容度があれば、レバ3倍をかけるのは合理的です。
逆に、たった5%のために元本割れ43%なんて割に合わないと考えるのであれば、レバなしとすべきです。
以上が「投資判断は(1)ポートフォリオの確率分布と(2)リスク許容度に基づいて行う」の理由です。
丁寧なご説明,ありがとうございます.
「低確率でしか発生しない莫益ケースを得るために,リターンが
マイナスになる可能性を高めるのは,割に合わない」と理解しました.
それでしたら,戦略として納得がいきます.
ただ,まだ感覚(→SPXLは長期投資でも意外と有利)とは合っていないので,
もう少し考えてみます.
ランダム変動部分は完全にランダムでなくて,平均への回帰があって,
「大きくマイナスになったら,次はプラス側に変動する確率が高くなる」
みたいな偏りがあるはず.こういう傾向がないと,コロナショックからの
V字回復みたいな状況は説明できない.コロナショックで-50%になっても,
その後の回復経路は,統計的には7%+ランダム変動だけのはず(ブラウン
運動は過去の履歴に依存しない)だけど,実際の株価は急速に元の値に
戻っているから.S&P500投資への信頼は,「長期で7%」もあるけど,
この「下がっても必ず戻って来るのでガチホールドしていれば良い」
という特性があるから.この「平均への回帰」効果があれば,
標準偏差20%といっても,長期で実効的に標準偏差がもっと少ない
かのように振る舞う可能性がありそう.
でも,この効果は既に標準偏差に反映されているような気もするし,
よくわからない・・・
すいません,上記コメントの「ランダム変動部分は」以降は,ひとり言を書いたつもりですので,あまり気にしないください.
すいません,上記コメントの「ラ/ン/ダ/ム変動部分は」以降は,ひとり言を書いたつもりですので,あまり気にしないください.