金融工学

S&P500に「72の法則」を適用して「10年後に元本2倍」のウソを確率分布で説明する。

投稿日:2021年5月17日 更新日:




 

過去記事の続き。

S&P500の年平均リターンは7%。だから「72の法則」を適用すれば10年で元本2倍になる。

これは正しくないと説明しました。理由はリスクの存在を考慮していないからです。だから正確にはこう考えるべき。

S&P500の年平均リターンは7%。ただし20%のリスクをもつ。従って10年後はある確率で元本2倍になる。

前者のイメージはこれ。数学のデルタ関数的なものです。

 

後者のイメージはコレ。リターンは確率分布をもつため、10年後のリターンは必ずしも2倍にならないのです。

 

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S&P500の年平均リターンは7%。ただし20%のリスクをもつ。従って10年後はある確率で元本2倍になる。

ではそれは何%なのか?

リスクの存在によってリターンは広がりをもつ確率分布を示します。

「2倍になる確率」をピンポイントで計算しても小さくなってあまり意味はありません。

なので「2倍以上になる確率」を計算してみます。これは確率分布カーブのリターンが2倍以上の部分を積分すれば計算できます。

結果は37%。思ったより高くないですね ww

たしかに「72の法則」は便利です。超簡単に元本2倍になる投資期間を計算できます。でも、リスクを考慮していないという点は頭に入れておくべきだと思います。

リスクの存在によってリターンの分布は広がりをもつ。だから数年後にあるリターンをもつ、なんて断言できない。

もし、ある金融商品が年利40%だからたった2年で元本2倍になると言ってる人がいたら聞いてみてください。「おまえ、それリスクあっても同じこと言えんの?」って ww

「72の法則」をリスク資産に適用するのは正しいのか?リターンの確率分布の観点から検証。

米国S&P500を平均リターン7%・リスク20%の幾何ブラウン運動でモデル化する理由

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-金融工学

執筆者:


  1. アバター Tochi より:

    ナルホドですね!(わかったフリ)
    この手の金融工学的な概念がイマイチ腑に落ちないのは、損切りをしないならいくら含み損が増え易か(リスクが高か)ろうがリターンが高い方がいいようしか思えない点です。長期投資なら下落時に損切りなんてまずやらないので、リスクの何が問題なのかイマイチ理解できないんですよね。
    例えば2倍以上の面積ではなく、1倍の前後の面積を比べてリスクが高い場合は1倍以下の面積のほうが大きくなるとかであるならば、もの凄い説得力があるんですけど・・ちらっ

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。

      >この手の金融工学的な概念がイマイチ腑に落ちないのは、損切りをしないならいくら含み損が増え易か(リスクが高か)ろうがリターンが高い方がいいようしか思えない点です。

      仰ってることがよく理解できなかったのですが、例えばどういうケースとどういうケースを定量的に比較して、どういう結果になるから「(リスクが高か)ろうがリターンが高い方がいい」と感じるのでしょうか?

      >長期投資なら下落時に損切りなんてまずやらないので、リスクの何が問題なのかイマイチ理解できないんですよね。

      Tochiさんのポートフォリオを知らない上での質問ですが、リスクを問題ないと考えるのであればレバレッジETFは購入されてますか?
      例えば3倍レバレッジをかければリスク・リターンともに3倍です。リスク上昇をなんとも感じないのであればリターン3倍だけ考えておけばいいわけですが、そのようなポートフォリオで運用されてるのでしょうか?

  2. アバター ishp@ck より:

    リスクが高いほど期待収益が絵に描いた餅なんですねw視覚的に偏りを示していただけてスッキリました。

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