金融工学

S&P500の積立投資と一括投資のリスクを確率分布の形状から定量的に比較する。

投稿日:2021年9月11日 更新日:




 

前回の記事の続きです。

オレンジ:一括投資で20年間放置したリターンの分布

青色:20年間定額つみたて投資したリターンの分布

積み立てケース (青色)の分布の広がりは一括ケース (オレンジ)の分布の広がりよりも小さくなっています。

積立投資することでリスク (価格変動の大きさの度合い)が低減できていることが分かります。

分布の広がりが小さくなるのは分かるけど、リスクの低下は定量的にはどう評価できるのよ?を説明するのが今回の趣旨。

 

価格が幾何ブラウン運動するときの分布の広がりは「分散」で表現できます。詳細は過去記事参照。該当箇所は下表の黄色い式。

つまり一括と積立で「分散」がどれだけ異なるかを比較すれば、リスク=リターンの広がりの度合いを定量的に比較できます。

一括投資ケースでは分散を計算するのは過去記事の計算方法に容易ですが、積み立てケースでは残念ながら私の数学力不足で計算できないので、別のアプローチを試みます。

「20年間積み立てしたときの確率分布の分散は、一括投資して何年間放置したときの分散に近いか?」を調べます。そのあと分散を計算して比較します。

 

Sponsored Link



 

まずは「20年間積み立てしたときの確率分布の分散は、一括投資して何年間放置したときの分散に近いか?」を調べます。

少し強引ですが、「20年間積み立て」の確率分布は「一括投資で7年間放置」の確率分布に近いことが分かりました。

次に上に挙げた式で分散を計算してみます。

(1) 一括投資で7年間放置 (≒20年間積み立て):0.93

(2) 一括投資で20年間放置:4.49

というわけで、20年間積み立ては20年間放置に比べて分散を1/5に抑えることができると分かりました。

一般的にリスクは標準偏差を言い換えたものです。標準偏差は分散を1/2乗したもの。というわけでこれも書き出すと、

(1) 一括投資で7年間放置 (≒20年間積み立て):0.96

(2) 一括投資で20年間放置:2.12

リスク (=標準偏差)で見ても、積み立て投資はリスクを1/5程度下げていることが分かりました。

これで積立投資が一括投資よりもリスクを低減できていることが定量的に評価できましたね。

 

関連記事:

S&P500に「72の法則」を適用して「10年後に元本2倍」のウソを確率分布で説明する。

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

S&P500投資の資産増加シミュレーションで暴落を取り入れるべきか?

  私はS&P500をリターン7%・リスク20%で色々とシミュレーションしてます。 資産運用シミュレーションでよくある手法は、価格変動を幾何ブラウン運動でモデルして投資期間に対する平 …

3倍レバレッジを一括の代わりに積立投資にしても平均値と中央値の乖離を防げない理由。

  読者様からレバレッジに関する過去記事について質問を頂きました。 記事の内容を要約すると、「S&P500の最適レバレッジは1.75倍。それを越えるレバレッジをかけるとリターンの中央 …

S&P500長期リターンの確率分布の変化を可視化する。

  S&P500指数がリスク20%・リターン7%の幾何ブラウン運動に従うと仮定、その際のリターンの確率分布を図示してみます。 幾何ブラウン運動の式は過去記事を参照。 下のグラフは20年間投資 …

「下がったら買う」は意味あるか?を定量的に検証する。

  投資信託を長期積立投資する際に、毎月定額積み立てるドルコスト平均と、株価が下がってから買う方法、どちらのリターンが高いのか? これは私も非常に興味がある問題だったので検証してみます。以下 …

投資でよく出てくる単語「リスク許容度」を分かりやすく説明する。

    前回の記事では、リスクが大きいとリターンが高くなるチャンスも増えるが、同時に元本割れする確率も増えることを確率分布で説明しました。 (1)リターン7%・リスク20%:元本割 …

 

都内在住JTC勤務の30代サラリーマンです。全資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に1億円を突破。世界経済の継続的成長を願いS&P500とオルカンで運用中。NISAとiDeCoをフル活用。

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ