資産運用 金融工学

積立投資の意外な盲点。投資期間後半で投資した分は元本割れ確率が高い。

投稿日:2021年2月16日 更新日:




 

以前の記事でサラリーマンが株式投資するなら、一括投資よりも積立投資にならざるを得ないという話をしました。理由は簡単で会社から受け取る給料の中から投資資金を捻出するのだから、毎月数万円、または毎年数万円という形にならざるを得ないのです。

では長期積立投資をする場合、どのように投資を終了するのかは少し悩みます。例えば30年間投資したとして31年目に一括で売却すべきか、もしくは少しづつ売却していくべきか?

仮に一括で売却することを考えている場合、積立投資の盲点にはまっていると思います。その理由は全投資期間の後半部分で購入したリスク資産は、リスクに晒す期間が短いために、元本割れしている可能性が高いからです。

今回はこの盲点を説明していきます。

 

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前提として、30年間毎年一定金額を積み立てて、31年目に全てを売却するとします。このとき毎年買ったリスク資産がリスクに晒される期間は次のようになります。

1年目に購入:30年

2年目に購入:29年

・・・

30年目に購入:1年

当然のことですが、投資後半で買うリスク資産の投資期間は短くなるので、リスクに晒される期間は短いのです。

過去の記事ではリスク資産はリスクに晒す期間が長ければ長いほど元本割れする確率が低いことを説明しました。米国S&P500 (年平均リターン7%、リスク20%)の投資期間に対する元本割れ確率を示したのが下の図です。1年後の元本割れ確率は40%ですが、30年後には10%まで下がります。

 

面白いのはここからです。上で説明したのは次の2点でした。(1) リスク資産を後半で買うほど市場に晒す期間は短くなる。(2) 市場に晒す期間が短いほど元本割れ確率は高い。 この2点をまとめたのが下のグラフです。

青い線は元本割れ確率、オレンジの積み上げは投資期間です。

例えば投資開始1年目で買ったリスク資産は30年間市場に晒されることで30年後の元本割れ確率は10%まで下がります。

ところが、投資期間30年目で買ったリスク資産は1年間しか市場に晒されないので、元本割れ確率は40%もあるのです。

もう少し細かく見ると、投資開始20年目以降に積み立てたリスク資産の市場に晒される期間はどれも10年以下です。その結果、投資終了時点での元本割れ確率はどれも20%を越えてしまうのです。

つまりこう言えるでしょう。長期積立投資して一括で売却する場合、投資前半に積み立てた分は元本割れしている確率は低いが、投資後半で積み立てた分は元本割れしている確率は高い。だから全てを一括で売却すると、後半で積み立てた分の低パフォーマンスに足を引っ張られて利益が下がる可能性が高い。

 

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これを解決する方法は2通りあります。

(1) 一括ではなく分割して売却する。

(2) 毎年買うファンドを変える。

(1)は容易でしょう。31年目で一括で売却するのではなくて数年かけて売却していくのです。例えば10年かけて売却していくとすると、30年目で積み立てたファンドも10年間市場に晒す期間をもつことができるので、元本割れ確率を下げることができます。ただし、各年に売却する分にも30年目で積み立てた分がわずかに混ざってしまっているので、(1)は根本的な解決にはなっていません。

(2)は可能かどうかは別として少し奇抜な方法ですが根本的な解決になるでしょう。なぜなら、こういう売り方ができるからです。

1年目に買った分: 31年目に売却

2年目に買った分: 32年目に売却

・・・

30年目に買った分: 60年目に売却

こうすれば(60年目にはヨボヨボ過ぎて正常な判断を下せない可能性がある点には目をつぶれば)、投資後半に買った分も十分な期間リスクに晒せるので元本割れ確率を減らせます。その結果パフォーマンスが大幅に向上するでしょう。

さすがに米国S&P500で積み立てるのに、30通りもファンドを変えるのは現実的ではないので、例えば1~10年目、11年目~20年目、21年目~30年目の3通りでファンドを変えたりするのがいいかもしれません。21年目~30年目で買ったファンドは20年程度運用して一括売却すればよろしい。なぜなら元本割れ確率は10%程度まで下がるからです。このように期間を分割してファンドを変える方法を(3)としましょう。

現時点で、理論的な観点・実用的な観点で私が良いなと感じている方法は(3)です。ただし、(1)と(3)のどちらのパフォーマンスが高いかは計算してみないと分かりません。このテーマは結構面白いので、今後も考察を加えていきたいと思います。

 

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