資産運用 金融工学

「下がったら買う」は報われない。(タイミング投資 VS ドルコスト平均)

投稿日:2022年11月11日 更新日:




 

前回の続きです。

「下がったら買う」は意味あるか?を定量的に検証する。

投資信託を長期積立投資する際に、毎月定額積み立てるドルコスト平均と、株価が下がってから買う方法、どちらのリターンが高いのか?

前回の前提条件は、「株価が前月比n%下落したら5万円投資、しなければ5万円は投資せずに現金で保有しておく」でした。この場合、30年後の資産を比較すると、「下がったら買う」戦略は毎月定額 (ドルコスト平均)にボロ負けででした。理由は、「下がったら買う戦略」だと、リスクに晒せる資産が激減するからです。

そこで“改良版”「下がったら買う」戦略を取ることにします。この戦略では、n%下落時の投資額を増額することで、30年間の総投資額をドルコスト平均と一致させます。

この場合の前提条件は;

(1) S&P500連動ファンドを想定。年率リスクとリターンはそれぞれ20%と7%とする。

(2) 株価は幾何ブラウン運動すると仮定、モンテカルロでシミュレーション。

(3) ドルコスト平均法では、毎月5万円を積み立てる。

(4) 「下がって買う」ケースでは、前月比n%下落したらX万円投資し、下落しなければ投資しない。n=1%、2%、3%、4%下落のケースを考える。

(5) 30年後の評価額を比較する。

“改良版”「下がったら買う戦略」で、n%下落時の投資額は、30年間の総投資額が1800万円となるように設定します。例えば、2%下落ルールの場合、145回投資チャンスがあるため、1回の投資額は1800万円÷145=12.4万円です。他のルールでも同様です。

2%下落ルールとドルコスト平均の、30年後資産の分布を比較したのが以下のグラフです。分布はほぼ一致しているのが分かります。

ドルコスト平均とn%ルールに関して、資産分布の平均値と中央値を比較した結果をまとめたのが以下の表です。ほとんど変わりないことが分かります。

前回の結果とあわせて、「n%下落したら売る戦略」とドルコスト平均を比較した結果をまとめます。

「n%下落したら売る戦略」をドルコスト平均を比較すると;

(1) 総投資額を一致させた場合、30年後資産にほぼ差はない。

(2) 総投資額を一致させない場合、現金比率が高くなるめ、30年後の資産はボロ負け。

この考察で分かったことは、株価が幾何ブラウン運動に従うと仮定すれば、下落タイミングを計って投資するのは無駄な労力、ということです。

では「50%暴落時に一気に投資したらどうなる?」という疑問も出てきます。幾何ブラウン運動にジャンプ項を入れた少し高度な計算をやれば検証できますが、非常に複雑になるのでやめておきます。

50%暴落なんてめったにないイベントだし、仮に「50%暴落しなければ投資しない」戦略を実践したとすると、いつで経っても手元に現金が積みあがるばかりなので、あまり効果がないと想像しています。

結論:タイミング投資は時間の無駄。タイミング図る暇があったら、もっと有益なことに時間を使いましょう。

 

関連記事:

S&P500の積立投資と一括投資のリスクを確率分布の形状から定量的に比較する。

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-資産運用, 金融工学

執筆者:

関連記事

リターンがマイナスだったころのはなし

  2018年にインデックス投資を開始しました。これまで概ね右肩上がりに資産が増加してきましたが、もちろんリターンがマイナスの期間もありました。下がリターン推移のグラフです。 投資を開始直後 …

WealthNaviはポートフォリオをどのように決めているのか?を説明する。

  過去に「WealthNaviのアルゴリズムを読むべし。現代ポートフォリオ理論に基づいてキッチリ分散。」という記事を書きました。 WealthNaviで運用することの是非はさておき、そのア …

なぜリスクが高いとリターンの中央値が下がるのか?を定量的に説明する。

    過去記事からの引用。 下のグラフは1年後のリターンの確率分布を示したもの。リスクを変化させていくと分布の計上がどう変わるかを示したものです。 グラフをみて分かる通り、リター …

【レビュー】ライフサイクル投資術を図解しながら読み解いていく。

  株式投資で一番楽なのは間違いなくドルコスト平均法です。ドルコスト平均法は定期的に株式を一定金額で取得し続ける手法なので、株式を高値掴みするリスクを減らすことができます。これが時間分散です …

株価はどう動くか?幾何ブラウン運動の株価変動モデルを説明します。

  株価はランダムな動きをすると仮定して構築されたのが現代ポートフォリオ理論。難しそうな微分積分の式を見れば怖気づきますがミソだけ押さえれば理解するのはさほど難しくありません。 株価が「ある …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ