金融工学

最適レバレッジと最適投資比率 (サミュエルソンの割合) との意外な関係を説明する。

投稿日:2021年8月5日 更新日:




 

前回の続きです。

(1) 相対的リスク回避度 (RRA)を求める。

(2) RRAを公式に代入してサミュエルソン割合を求める。

(3) サミュエルソン割合をリスク資産の割合とする。

 

ところで。

私が初めてライフサイクル投資術を読んだとき、サミュエルソン割合の式はなんでこんな形をするのか疑問に思っていました。

サム割合 = リターン / (リスクの2乗x RRA)

この式・・・どこかで見たことがあるな ww

そう、あの式です。

サミュエルソン割合の式を変形してみます。

サム割合 = リターン / (リスクの2乗) x 1/RRA

過去記事によると、リターンをリスクの2乗で割った値とは、まさに中央値が最大になる最適レバレッジでした。

つまり、こう書き直せるんです。

サム割合 = 最適レバレッジ / RRA

ちょっとクドいかもしれませんが、さらに書き直すと

リスク資産の最適な割合 = 最適レバレッジ / RRA

 

Sponsored Link



「ライフサイクル投資術」の計算ステップを書き換えてみると、

(1) 下のグラフからRRA (相対的リスク回避度)を求め、

(2) リスク資産のリスク・リターンから最適レバレッジを計算し、

(3) 最適レバレッジをRRAで割ればリスク資産の最適な比率を計算できる。

S&P500を例とすると、最適比率=1.75/RRAです。

上のグラフに従えば、リスクに晒してもよい収入の上限は50%でそのときのRRAは最も低い1.0。

つまりこのグラフに従えば、リスクに晒してもよい (=最悪ゼロになってもいい)収入の割合をマックスで50%とすれば、そのときのリスク資産の比率=最適レバレッジに等しい。リスクに晒してもよい収入の割合が50%未満なら、リスク資産の比率は最適レバレッジをRRAで割ったものに等しい。

おもしろいですね。これはおもしろい。

相対的リスク回避度、リスク資産の最適比率、最適レバレッジがつながった、というわけです。

ちなみに、サム割合=リターン / (リスクの2乗 x RRA)の式はマートンのポートフォリオ問題から導出されます。略称はマートン問題

マートン問題は、「価格がランダムに変動するリスク資産と無リスク資産の最適な割合は何か?」という問題で、最適制御理論を用いて計算することができます。

これは次の記事で紹介。

 

関連記事:

自分のリスク許容度を知るための相対的リスク回避度の計算方法。

リスク資産の最適な割合を計算するためのサミュエルソンの割合。

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

Twitterでブログ記事の更新通知を受け取れます:

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


  1. アバター Tochi より:

    数式の理解は出来ておりませんが、何だか凄いアハ!体験を為さっている様に見えます。ある理論が別の理論と融合するなんてとても気持ちよさそうで非常に羨ましい。
    もう少し練り込んで論文にして発表するのも手なのでしょうか。その際は出来れば日本語でお願いしたい所です・・。

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。

      >何だか凄いアハ!体験を為さっている様に見えます。

      確かに、少しアハ体験をしました。

      >もう少し練り込んで論文にして発表するのも手なのでしょうか。その際は出来れば日本語でお願いしたい所です・・。

      私は数式を見ていて新鮮に感じましたが、たぶん金融を生業にしてる人からすれば当たり前のことかもしれませんね。。。

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

なぜレバレッジをかけて高リターンを得るのは運ゲーなのかを幾何ブラウン運動で説明する。

    前回の記事「なぜリスクが大きいとトータルリターンが低下するのか?幾何ブラウン運動で定量的に説明する。」では、リスクがトータルリターンを下げる方向に寄与することを説明しました …

暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの方法。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で書いたように、S&P500投資シミュレーションに暴落の効果を取り入れたシミュレーションをやってみます。 そのモチベーションは過去記事で書いたように、現実世界では暴落が発 …

高配当株かグロース株どちらに投資するかはIRRを比較するべし。

  読者様から質問を頂きました。どうもありがとうございます。 高配当銘柄に投資するか成長が見込めるグロース株に投資するか、どちらが大きなリターンを得ることができるとお考えでしょうか?理由も教 …

ポートフォリオ最適化。マートン問題を数式なしで解説する。

  前回の続きです。 「ライフサイクル投資術」の計算ステップを書き換えてみると、 (1) 下のグラフからRRA (相対的リスク回避度)を求め、 (2) リスク資産のリスク・リターンから最適レ …

S&P500インデックス投資でFIREできるか?を破産確率で検証する。

  「S&P500インデックス投資でFIRE (早期退職)できるか?」は個人的にとても気になるテーマです。 「できる派」の唯一の定量的な根拠は有名な4%ルールですが、「4%ルール」は …

 

都内在住の30代サラリーマンです。全資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に1億円を突破。S&P500とオルカンで運用中。NISAとiDeCoをフル活用。

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ