金融工学

ポートフォリオ最適化。マートン問題を数式なしで解説する。

投稿日:2021年8月6日 更新日:




 

前回の続きです。

「ライフサイクル投資術」の計算ステップを書き換えてみると、

(1) 下のグラフからRRA (相対的リスク回避度)を求め、

(2) リスク資産のリスク・リターンから最適レバレッジを計算し、

(3) 最適レバレッジをRRAで割ればリスク資産の最適な比率を計算できる。

ちなみに、サミュエルソン割合=リターン / (リスクの2乗 x RRA)の式はマートンのポートフォリオ問題から導出されます。

 

無リスク資産 (現金・債券)とリスク資産 (株)を保有するとき、リスク資産の最適な割合はサミュエルソン割合、つまりリターン / (リスクの2乗 x RRA)で計算できる。

これは「マートンのポートフォリオ問題」から導出できます。

では、「マートンのポートフォリオ問題」とは何か?

 

Sponsored Link



マートンのポートフォリオ問題とは、「個人の期待生涯効用を最大にするように最適な消費と最適な資産の組み合わせを決定する」という問題です。

「期待生涯効用」が分かりにくいと思うので数式なしで説明すると:

効用:得た利益に対する個人の主観的な満足度

期待効用効用 (満足度)の期待値

期待生涯効用:各時点の消費の効用と保有資産の効用の和の期待値

ざっくりいえば、「毎年金を使って気持ちよく感じる度合いと、毎年口座に残ってる資産で気持ちよく感じる度合いの、それらの合計の期待値」です。

なぜ「期待値」なのか?それはリスク資産の価格が変動するためです。資産価格の変動は幾何ブラウン運動に従うと仮定します。

 

この問題は、工学の世界では確率的最適制御問題の一つと位置付けられています。

最適制御問題とは、時間変化する対象をどうやって最適に制御するか?という問題。一例として「月面に接近するロケットを最小限の燃費消費で着陸させるにはどのようにロケットを制御するか?」の月面着陸問題があります。

マートン問題の場合は、リスク資産価格がランダムに変動するために、古典的な最適制御問題に加えて確率的な要素が入ってくるのです。

この問題を解くのはかなり難しい。

イメージだけザックリ言えば、「各時点の消費」と「各時点のリスク資産の比率」を変数と考えて、ちょっとずつ変化させながら期待生涯効用を最大化する組み合わせを捜していきます。

 

この期待効用最大化問題からどうやってリターン / (リスクの2乗 x RRA)が求められるか?

それは次回の記事で紹介します。

 

参考:

不確実性の下での最適消費・資産選択問題    板垣有記輔

最適レバレッジと最適投資比率 (サミュエルソンの割合) との意外な関係。

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

【感動】ブラック・ショールズ・モデルを一番分かりやすく書いた本はこれだ ww

 

Twitterでブログ記事の更新通知を受け取れます:

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの方法。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で書いたように、S&P500投資シミュレーションに暴落の効果を取り入れたシミュレーションをやってみます。 そのモチベーションは過去記事で書いたように、現実世界では暴落が発 …

「下がったら買う」は意味あるか?を定量的に検証する。

  投資信託を長期積立投資する際に、毎月定額積み立てるドルコスト平均と、株価が下がってから買う方法、どちらのリターンが高いのか? これは私も非常に興味がある問題だったので検証してみます。以下 …

現金:S&P500の最適比率が分かる早見表 (マートン問題と相対的リスク回避度で計算)

  過去記事でS&P500に投資した際の最適比率を計算する方法を、マートンのポートフォリオ問題を用いて説明しました。 マートン・社畜の式: S&P500の最適比率 = 1.7 …

株式に債券を混ぜて投資する具体的な方法

  S&P500やオルカンだけに投資する方法は楽チンですが、これだとリスクが高くて危ないという考え方もあります。ではリスクを下げるために債券をどう混ぜればよいのか? 私の考えはGPI …

3倍レバレッジを一括の代わりに積立投資にしても平均値と中央値の乖離を防げない理由。

  読者様からレバレッジに関する過去記事について質問を頂きました。 記事の内容を要約すると、「S&P500の最適レバレッジは1.75倍。それを越えるレバレッジをかけるとリターンの中央 …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ