米国S&P500の最適なレバレッジは1.75倍であることは前回の記事ですでに紹介しました。1.75倍以上のレバレッジをかけると時間とともにリターンの中央値が小さくなるためです。
時間が経てば経つほど中央値が下がる以上、レバレッジ3倍ETFは長期保有には適していないと結論できます。では短期保有ならどうか?短期間だけリスクをとって高いリターンを得るという方法もあると思います。
ではその短期とは何年にするべきか?言い換えると、最適なレバレッジである1.75倍よりもレバレッジ3倍の方が高い確率で高いリターンを得ることができる期間は何年か?
これを計算してみます。
ポートフォリオがあるリターンを得る確率は対数正規分布に従います。この性質を使えば、そのポートフォリオが、ある時点で、ある値以上のリターンを得る確率を計算することができます。
そこでS&P500 (リスク:20%、リターン: 7%)にレバレッジをかけた時に、リターンが2倍以上になる確率を調べると次のような結果になります。横軸を時間、縦軸はリターンが2倍になる確率です。
例えばレバレッジ3倍をかけた場合、1年後に2倍を超える確率は13.5%、2年後は22.8%、・・・と増えていきます。ところがある時期を超えるとより低くレバレッジをかけた時の方が大きくなることが分かります。
そこで各レバレッジに関してランク付けをしたのが下のグラフです。
これを見るとレバレッジ3倍は始めの5年間は一番高い確率でリターン2倍以上を達成し、その後順位を落としていくことが分かります。時間が経過するほどレバレッジ1.75倍とレバレッジなしが優勢になります。
ここまで見ると「レバレッジ3倍を5年間ホールドすればいいじゃないか!」と考えたくなりますが、別の角度からの検証も必要でしょう。レバレッジ3倍はリスクが高いのは当然ですが、ではどれくらいの確率で元本割れするのか?
元本割れする確率を求めたのが下のグラフです。
3倍レバレッジの確率は全期間を通して他のレバレッジよりも高く、40~50%です。どのケースでも時間が経てば経つほど元本割れリスクは減りますが、2倍以下に比べて3倍の場合はリスク低下が鈍いことが見てとれます。ちなみにレバ3倍の5年目の元本割れ確率は46%です。
ということでまとめると次の通りになります。
S&P500レバレッジ3倍 (SPXL)は長期保有に適していない。短期でホールドするにしても5年を上限にすべし。ただし元本割れリスクは40%を超える。
個人的には長期ホールドを前提にS&P500に投資しているのでレバレッジをかけるつもりはありません。
長期保有するほどレバなしの方がリターンが2倍になる確率は高まる。そして長期保有するほどレバなしの方が元本割れ確率は減る。この2点だけでレバなしの運用が長期保有者にとって最適な戦略であることは明らかでしょう。
参考:
現代ポートフォリオ理論をまとめた記事を書いています。各記事へはこちらから。
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