金融工学

なぜリスクが高いとリターンの中央値が下がるのか?を定量的に説明する。

投稿日:

 




 

過去記事からの引用。

下のグラフは1年後のリターンの確率分布を示したもの。リスクを変化させていくと分布の計上がどう変わるかを示したものです。

グラフをみて分かる通り、リターンを一定にしてリスクを大きくしていくと確率分布の形状が低リターン側に盛り上がっていきます。

では中央値はどのように変化するかというと:

青色 (リターン7%・リスク20%):中央値は1.05倍

黄色 (リターン7%・リスク100%):中央値は0.65倍

オレンジ (リターン7%・リスク200%):中央値は0.15倍

つまり仮にリスクが200%というとんでもなく大きな値だとすると、50%の確率でリターンは0.15倍以下になります。

平均値は一定なのにも関わらず中央値は激下がり。中央値が激下がりするということは元本割れ確率が激上がりすると言い換えることが出来ます。

ではなぜこうなるのか?

 

Sponsored Link



 

株価が幾何ブラウン運動すると仮定するとリターンの中央値は1年後に以下のように表現できます。式の導出は過去記事を参照。

μは年率平均リターン、σはリスク。式は分かりやすくするために級数展開しています。

リスクとリターンは数%程度なので2乗の項は無視できるほど小さくなります。従って第二式のように近似できる。

この式を見て分かる通り、μ (リターン)が増えると中央値が増加するように作用し、σ (リスク)が増えると中央値が減少するように作用することが分かります。

これが、リスクが大きいと中央値が下がる定量的な説明です。

 

関連記事:

投資のリスクが大きくて何が問題なのか理解できません。リターンが大きければそれでいのでは?

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる【金融工学】

 

 

Twitterでブログ記事の更新通知を受け取れます:

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

S&P500の最適レバレッジは1.75倍。SPDRとSPXLを10:6で混ぜれば作れる。

  前回の記事でS&P500の最適レバレッジは1.75倍だと説明しました。レバレッジを大きくすればするほどリターン分布の中央値が大きくなりますが、ある閾値を境に中央値は下がります。そ …

米国S&P500の最適なレバレッジが1.75倍の理由。だからSPXLの3倍は高すぎる。

  米国S&P500の最適なレバレッジは1.75倍であることは前回の記事ですでに紹介しました。なぜかこの記事のアクセス数が異常に高かったので、もう少し分かりやすくかみ砕いた内容で再掲 …

なぜリスクが大きいとトータルリターンが低下するのか?幾何ブラウン運動で定量的に説明する。

    株価の変動は幾何ブラウン運動でモデルできることがよく知られています。 幾何ブラウン運動はこのブログの記事で何回も出てきてますが、あえて基礎に立ち返ってみます。すると株価変動 …

資産運用で何に投資するかはIRR(内部収益率)を比較して決めるのが基本です

  十分な資金が手元にあって何か投資をしたいとき、何に投資をするべきか?それをどのように意思決定するべきか? 例えばある企業が太陽光発電事業に参入するとして2つのケースから選ぶ必要があるとし …

S&P500の積立投資でリターンの確率分布をどう計算するか?

  過去記事でS&P500のリターンの確率分布をグラフ化したものを紹介しました。 S&P500指数がリスク20%・リターン7%の幾何ブラウン運動に従うと仮定、その際のリターンの確率分 …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ