金融工学

投資のリスクが大きくて何が問題なのか理解できません。リターンが大きければそれでいのでは?

投稿日:2021年8月1日 更新日:

 




 

投資でリスクがいくら大きかろうがリターンが大きければよい。リスクが大きくて何が問題なのか理解できません。

というコメントを過去記事で頂きました。

大丈夫です。ほとんどの人は理解できていないので ww

私の知る限りではリスクの意味すら理解してる人は少ないです。「リスク=危険」と思ってる人が80%だと思いますよ。

過去記事でも書いてますが、リスクとは不確実性、つまり「先が見通せない」ということです。金融の分野に限って言えば「資産の価格変動の度合い」であり、金融工学では「年率リターンの分布を正規分布で近似した際の標準偏差」です。

ポートフォリオ理論では、リターン=大きければよいもの、リスク=小さければよいもの、とみなします。これに基づけば、シャープレシオ (リターン/リスク)が最大のポートフォリオが一番よい、となる。

ここで疑問を持つ人もいるはず。なぜ「リスク=小さければよいもの」なのか?リスクとは価格変動の大きさを意味するのだから、リターンが大きくもなるし、小さくもなるはず。リターンが大きくなるチャンスもあるのだから、必ずしも「リスク=小さければよいもの」とはいえないのでは?と。

至極まっとうな疑問だと思います。

しかし、私の考えはこうです。

リスクが大きいことをよいと考えるか、悪いと考えるかはリスク許容度による、と。

それは資産価格が幾何ブラウン運動のモデルに従って変動すると仮定して計算してみれば明かです。式は過去記事参照。

 

Sponsored Link



 

下のグラフは1年後のリターンの確率分布を示したもの。リスクを変化させていくと分布の計上がどう変わるかを示したものです。

青色:リターン7%、リスク20%

黄色:リターン7%、リスク100%

オレンジ:リターン7%、リスク200%

黒いカーブはリスクを20%ずつ増やして作成した分布。これをみて分かる通り、リターンを一定にしてリスクだけを上げていくと、分布はリターン1倍以下の方向に向かって膨らんでいくことが分かります。

オレンジ色はリスク200%とかなり極端ですが、山が大きく立ち上がっていくのが分かります。

実際にリターン1倍の元品割れ確率を計算すると、元本割れ確率はリスクが大きいほど、高まります。

リターン7%・リスク20%:45%

リターン7%・リスク100%:68%

リターン7%・リスク200%:80%

ポイントは、どのケースでも平均リターンは同じという点です。

リスクが大きいほど、元本割れ確率は高まるが平均リターンは同じ。

なぜ、元本割れ確率が高まるのに平均リターンが同じなのかといえば、リスクが大きいと、リスクが2倍超えるなどの高リターン側の確率が増えるからです。

しかし、例えばリターンが2倍を超える確率をみると、リターン20%では1%、リターン100%では13%。

まとめると、

(1)リターン7%・リスク20%:元本割れは45%、2倍越えは1%

(2)リターン7%・リスク100%:元本割れは68%、2倍越えは13%

では、(1)か(2)のどちらを選ぶか?70%近くの元本割れ確率を受け入れてでも2倍越えリターンを狙いにいくか否かは、けっきょくリスク許容度による、というのが私の考え。

だから「リスクが大きいことの何が問題なんですか?」に対する私の答えは、「リスクが大きいこと自体は問題ではないが、高い元本割れ確率を受け入れてまでやるべき投資なのか、もちろん考えてるんですよね?」だな ww

 

 

(※) 補足。同一リターンでリスクだけ変えた分析は現実的なのか?「リスクの大きさなんて考える必要はなし、たとえわずかでもリターンさえ大きければよい」という考えであれば、例えば(A) リターン7%・リスク20% (B) リターン 7.1%・リスク200% の2通りから(B)を選ぶはず。ただし、(B)の確率分布はリターン7%・リスク200%とほぼ同じです。従って単純化のためにリターンは同じとしてリスクだけ変化させて比較しています。当然、リスクだけでなくリターンも100%などと大きくすれば、確率分布の形状は大きく変化します。結局確率分布の形状を決めるのは、リターンとリスクの組み合わせです。

 

リスク関連記事:

つみたて投資でなぜリスクを減らせるのかを数字で説明する。

リスク (神々への反逆)ピーター・バーンスタインの書評。リスクマネジメントの歴史を理解できる良書。

 

なぜリスクが高いとリターンの中央値が下がるのか?を定量的に説明する。

資産をすべて銀行預金するのはリスク許容度が低いなら合理的。

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


  1. アバター Tochi より:

    綺麗なグラフでご説明頂き感動的で、非常にわかりやすかったです。

    リターンが同じならリスクが小さいに越したことが無いのは仰る通りに思えました。
    また、リスク許容度が問題なのだという点もナルホドです。
    直感に反し、リスクが高いとピークの位置が1よりも下回るのが不思議でした。非常に興味深いです。
    直感に頼るだけではなく、ある程度勉強をしないといけないと再認識できました。

    一方でリターンとリスクは概ね相関傾向があるのではないかという気がするので、実際の銘柄ではこの点を注意して見る必要がありそうだと感じました。

    どうもありがとうございます。

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【重要】積立投資の新たな解釈。積立投資を「投資金額の時間発展の総和」と捉える。

  一括投資と積立投資の違いは何か? 前者は手持ちの資金を初年度に一括で投資すること。後者は手持ちの資金を数回に分けて投資することです。これだけ読んでもふ~んとしか思いません。では図示してみ …

なぜ全てのリスク資産の時価総額加重平均が最適なポートフォリオなのか?その理由と理論的背景。

  数式がたくさん出てきます。興味ない方はトップページにエスケープしてください。   なぜ時価総額加重平均が最適なポートフォリオなのか? これは現代ポートフォリオ理論から導き出され …

【感動】ブラック・ショールズ・モデルを一番分かりやすく書いた本はこれだ。

私が大学時代から愛読している本に長沼伸一郎氏の直観的方法シリーズがあります。 久しぶりに本棚から引っ張り出して「経済数学の直観的方法(確率・統計編)」を読んでいたんですが、唸りましたね。とにかく難しい …

【驚愕】米国S&P500のリターンが示すサイクル。上がれば下がる市場のリズム。

    株価は面白いように上昇し続けるときもあれば、悲しいほど下がり続けることもあります。 過去の実績を分析するとS&P500は年間平均リターンが7%。だからS&P …

S&P500に短期でレバレッジをかけたときの比較。レバレッジ3倍がショボすぎて泣ける ww

  前回の続き: 10年間レバレッジ3倍かけると: 元本割れ確率は45%でトップ。 リターンが3倍を超える確率はリターン2倍よりも劣る。 意外ですね。せっかく3倍レバレッジかけたのに元本割れ …

チャンドラです。

都内在住の30代サラリーマンです。このブログではインデックス投資の利点、運用成績、運用シミュレーションや金融工学の記事を公開していきます。

自己紹介は:こちら

お問い合わせは:こちら


にほんブログ村 株ブログ インデックス投資へ

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ