金融工学

暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの方法。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

投稿日:




 

過去記事で書いたように、S&P500投資シミュレーションに暴落の効果を取り入れたシミュレーションをやってみます。

そのモチベーションは過去記事で書いたように、現実世界では暴落が発生するのだから、暴落効果を取り入れた方がより現実に近い予測ができるだろうというと考えるからです。

暴落を考慮しないケース、つまり株価がリスクとリターンに従って変動する場合、その価格変動は幾何ブラウン運動でモデルできます。S&P500の場合、リスクは20%、リターンは7%です。詳細は過去記事参照。式を再掲します。

このモデルに暴落の効果を取り入れた式は下のようになります。

式の細かい説明は割愛します。ネットでいくつかの文献が出ていますが、分かりやすいものはコレ。以下ではポイントだけ説明します。

幾何ブラウン運動の式に新たに追加したのが赤字のジャンプ過程の項です。この項が何を表しているかというと、

(1) 暴落はポアソン分布に従って発生する。

(2) 暴落の大きさはある平均値と標準偏差に従う正規分布に従う。

要するに、暴落はたまにしか起きないのでその「たまに起きる」をポアソン過程で数学的に表現しているのです。

そして暴落の大きさも20%とか50%とか決まった数値ではないので、ある程度の幅をもつと仮定しています。

(補足:右辺第4項の補正項はジャンプ過程の平均値を除く働きをします。こうすることで、リターンの平均値は幾何ブラウン運動のドリフト項のみから寄与するように調整しています。そもそも仮定した年平均リターン7%は過去の暴落込みのデータから推測した値なので、ドリフト項のμに7%を代入するにはジャンプ過程の平均値を除く必要があるのです。)

 

Sponsored Link



 

ポアソン過程は、ランダムに発生する事象の発生回数を記述する確率過程です。例えば店舗に到着する客の数はポアソン分布でモデル化します。(ちなみに店舗のレジの数はポアソン分布に従って到着した客の待ち時間をもとに計算します。)

というわけで、たまにしか発生しない暴落の発生確率をポアソン分布に従うと仮定して、幾何ブラウン運動に暴落の効果を取り込んでいるのです。

暴落の期待回数が10年に1回と仮定します。そのときの1年当たりの暴落確率は下のようになります。

暴落しない (回数=0)が90%、1回暴落する確率が10%、2回暴落する確率が0.5%、3回以上はほぼゼロです。

このジャンプの効果を取り込んでシミュレーションするとどうなるか?

結果は次の記事で紹介します。

 

関連記事:

【暴落】S&P500投資の資産増加シミュレーションで暴落を取り入れるべきか?

なぜリスクが大きいとトータルリターンが低下するのか?幾何ブラウン運動で定量的に説明する。

 

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

現金:S&P500の最適比率が分かる早見表 (マートン問題と相対的リスク回避度で計算)

  過去記事でS&P500に投資した際の最適比率を計算する方法を、マートンのポートフォリオ問題を用いて説明しました。 マートン・社畜の式: S&P500の最適比率 = 1.7 …

積立投資の意外な盲点。投資期間後半で投資した分は元本割れ確率が高い。

  以前の記事でサラリーマンが株式投資するなら、一括投資よりも積立投資にならざるを得ないという話をしました。理由は簡単で会社から受け取る給料の中から投資資金を捻出するのだから、毎月数万円、ま …

TECLとTQQQのレバレッジ3倍は高すぎるのか?最適レバと比較すると全然高くなかった。

  前回の記事ではS&P500の最適レバレッジが1.75倍であることを紹介しました。ポイントだけ再掲します。 (1) ポートフォリオにレバレッジをかけるとリスクとリターンが高くなる。 …

S&P500の積立投資と一括投資のリスクを確率分布の形状から定量的に比較する。

  前回の記事の続きです。 オレンジ:一括投資で20年間放置したリターンの分布 青色:20年間定額つみたて投資したリターンの分布 積み立てケース (青色)の分布の広がりは一括ケース (オレン …

myINDEXで効率的フロンティア曲線を見てみる。

  現代ポートフォリオ理論では効率的フロンティアという考え方があります。 効率的フロンティアとは、色んなリスク資産を組み合わせてポートフォリオを作ったときに、あるリスクに対して最大のリターン …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ