金融工学

S&P500インデックス投資でFIREできるか?を破産確率で検証する。

投稿日:2022年4月24日 更新日:




 

「S&P500インデックス投資でFIRE (早期退職)できるか?」は個人的にとても気になるテーマです。

「できる派」の唯一の定量的な根拠は有名な4%ルールですが、「4%ルール」は胡散臭いと思っています。

4%ルールとは;

・毎年、資産運用額の4%未満を生活費として切り崩していれば、30年以上が経過しても資産が尽きる確率は非常に低い。

・「4%」は、アメリカの一般的な株価の成長率(7%)から物価上昇率(3%)を差し引いて計算されたもの。要は投資で得られる利益の範囲内で生活を続ければ、半永久的に資産が目減りすることなく生活ができる。

・そして資産運用額の4%を1年間分の生活費として切り崩すということは、逆算すれば、元となる資産は1年間の支出の25倍が必要になるということ。

つまり、年間生活費20万円なら、S&P500連動インデックス投信に6000万円ぶちこんでおけば労働収入なくても生きていけるということ。

投信を現金化する際に税金が20%かかるとか、日本で物価上昇率3%はありえない、とか細かいことはさておき、この4%ルールの致命的な欠点は、株価変動リスクが考慮されていない、という点にあると思います。

株価変動リスクを考慮したFIRE後のシミュレーションは難しくありません。

たとえば;

(1) S&P500投信の資産額6,000万円からスタート。

(2) 毎年240万円引き出す。

(3) 株価変動は幾何ブラウン運動でモデル化。

そしてX年後にどれくらいの確率で破産 (資産マイナス)になるかを計算します。何歳でFIREするかによりますが、40歳でFIREするなら、X=50の破産確率がほぼゼロならFIRE成功でしょう。

以下は実際に資産推移をシミュレーションしてみた結果を10パターン示しています。6000万円からスタートして30年後に破産したのが赤色生き残ったのが青色

これを数万回とか計算して、何回破産するかをカウントすれば、破産確率を計算できます。

というわけで、次回は実際にS&P500に投資した際の破産確率を示します。

結論から言えば、投資期間が長くなるほど破産確率は結構高くなります。つまり4%ルールの鵜呑みはかなり危険です。

 

関連書籍:

FIRE後の税金・年金が分かりやすかった本。

関連記事:

6000万円でFIREできるか?という問題。「資産増加の実感」から「資産減少への焦り」へ。

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

現金:S&P500の最適比率が分かる早見表 (マートン問題と相対的リスク回避度で計算)

  過去記事でS&P500に投資した際の最適比率を計算する方法を、マートンのポートフォリオ問題を用いて説明しました。 マートン・社畜の式: S&P500の最適比率 = 1.7 …

レバレッジ3倍SPXLに投資するなら最大5年にするべきだと考える理由。ただし元本割れリスクは高い。

  米国S&P500の最適なレバレッジは1.75倍であることは前回の記事ですでに紹介しました。1.75倍以上のレバレッジをかけると時間とともにリターンの中央値が小さくなるためです。 …

マートン・社畜の式 (S&P500の最適比率 = 1.75 / RRA)を説明する。

  過去記事でマートンのポートフォリオ問題と最適レバレッジ比率の関係について紹介しましたが、名前を付けておこうと思います ww この式は結構使えると思うし、今後も色々と引用するときに名前ある …

積立投資の意外な盲点。投資期間後半で投資した分は元本割れ確率が高い。

  以前の記事でサラリーマンが株式投資するなら、一括投資よりも積立投資にならざるを得ないという話をしました。理由は簡単で会社から受け取る給料の中から投資資金を捻出するのだから、毎月数万円、ま …

S&P500に一括投資したときの元本割れ確率を計算した。

  前回の続き。 資産推移のグラフは単線で引いた平均値の推移をみるよりも、資産の広がりを加えた方がより現実的だと紹介しました。 下のグラフはS&P500指数がリスク20%・リターン7 …

都内在住の30代サラリーマンです。資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に資産1億円を超えました。

このブログではインデックス投資の利点、運用シミュレーションや金融工学の記事を公開していきます。

趣味はミニベロ

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ