金融工学

つみたて投資でなぜリスクを減らせるのかを数字で説明する。

投稿日:2022年2月16日 更新日:




 

一括投資と比べてつみたて投資って何がありがたいのか?と聞かれれば、リスクを減らせるのがイイ!というのがザックリした(よくある)答えです。

ただし、この点はもう少し深堀する価値があると思っています。リスクを下げることに本当にメリットがあるのか、と。

20年間、毎年定額をつみたてることを考えてみます。

以下のグラフは過去記事からの引用です。S&P500に1年間投資した場合、2年間投資した場合、・・・、20年間投資した場合、のリターンの確率分布を示しています。リスク:7%、リターン:20%と仮定。

1年だけ投資した際の分布形状はシャープです。一方で長期間投資するほど分布形状は平べったく広がっていきます。日々価格変動する市場へのエクスポージャーが長ければ長いほど、分布の広がり (=リスク)が大きくなるのが分かります。

では、つみたて投資した場合の分布はどうなるかというと、上の分布を足したものだと分かります。(厳密には、足した後に分布面積が100%になるように調整が必要。)

感覚的には、シャープな形状と平べったい形状を足し合わせた中間のような形状になるはずです。というわけでやってみた結果が下のグラフです。一括投資20年間 vs 20年間定額つみたて。

先に予想したように、一括は平べったい分布。つみたてはシャープな分布。だから、つみたての方がリスク (確率分布のばらつき)が下がる、といえるわけです。

一括投資とつみたて投資、どちらがよいか?を判断するには、この分布を眺めるとよいと思います。

分布を比較すると、一括投資の分布はリターン0.5倍以下の確率と、リターン2.3倍以上の確率がつみたて投資よりも高くでていることが分かります。

つまり、一括はつみたてに比べて、損する確率が高ければ得する確率も高い。ここを自分のリスク許容度をもとにどう捉えるか?が選択の基準になりそうです。

ただパッと見た感じでは、リターン0.5倍以下の大損する確率は大きく変わらないように見えます。であれば、一括でぶちこんで高リターンを狙ったほうがよさそうです。

この分布形状を次回の記事でもう少し分析してみます。

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

合理的な投資家はリターンを高めるためにレバレッジをかける。現代ポートフォリオ理論の観点から。

  過去記事で解説したように、投資家のポートフォリオはリスク・リターン平面上で、無リスク資産と接点ポートフォリオを結んだ線上にあります。 接線のうち、無リスク資産と接点ポートフォリオの間のポ …

S&P500の中央値はどう変化するか?幾何ブラウン運動による中央値の変化を示す。

  過去記事では資産の推移を計算するときに平均値を使うのはミスリードする可能性があると紹介しました。 じゃあ、平均値ってなんぞや?要は資産価格は平均値の周りにぐにゃーと広がるように分布をもつ …

3倍レバレッジを一括の代わりに積立投資にしても平均値と中央値の乖離を防げない理由。

  読者様からレバレッジに関する過去記事について質問を頂きました。 記事の内容を要約すると、「S&P500の最適レバレッジは1.75倍。それを越えるレバレッジをかけるとリターンの中央 …

S&P500 2倍レバレッジは暴落に弱いか定量的に分析する。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で紹介した、暴落を取り入れた幾何ブラウン運動のシミュレーションをS&P500の2倍レバレッジに適用してみます。 2倍レバレッジは名著「ライフサイクル投資術」でも「レバレッ …

現金:S&P500の最適比率が分かる早見表 (マートン問題と相対的リスク回避度で計算)

  過去記事でS&P500に投資した際の最適比率を計算する方法を、マートンのポートフォリオ問題を用いて説明しました。 マートン・社畜の式: S&P500の最適比率 = 1.7 …

サラリーマンが全資産の95%をインデックスファンド(S&P500・オルカン)で運用中。2024年に億り人達成!ブログで様々な投資シミュレーションを紹介!

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ