資産運用

現代ポートフォリオ理論。分散投資でリスクが下がる理由を説明する。

投稿日:2020年9月30日 更新日:




 

「卵を1つの籠に盛るな」というのは投資の格言。投資する際に複数の銘柄に投資することでリスクを下げることを意味しています。

ただし卵を複数の籠に持っただけではリスクを下げることはできません。例えば複数の籠が互いに固いヒモでつながれていた場合、籠を落とせば隣の籠も落ちる。そして全ての卵は割れる・・・。

複数の籠がヒモでどれぐらい固くつながれているかを表すのが、複数の銘柄の相関。2つの銘柄の相関が正の相関にあれば似た動きをするし、負の相関にあれば反対の動きをするということです。

 

Sponsored Link



 

 

マルコビッツが提唱した現代ポートフォリオ理論が素晴らしいのは、「互いに反対の動きをする銘柄を組み合わせてポートフォリオを組めば、ポートフォリオ全体のリスクを下げることができる」という感覚的に正しいことを、数式で証明したことです。

本質だけ知るなら、難しい数式は必要ありません。四則演算だけで体感できます。互いにリスクとリターンが異なる2つの銘柄でポートフォリオを組むことを考えます。

銘柄A: リスク10% リターン2%

銘柄B: リスク20% リターン10%

この2つの銘柄の割合を変えてグラフ上でプロットしたのが下図。ただし相関係数を変えた3つの曲線を書いています。

(ここではリターンのばらつきを示す標準偏差を「リスク」と表現しています。)

相関係数が-1.0から+1.0で定義される相関の強さを表す値。+1.0ならAとBは全く同じ動きをします。逆に-1.0なら正反対の動きをする。ゼロなら相関がない。ここでは-0.5, 0, +0.5の値を例として使っています。

これを見ると、相関が小さくなるほど曲線の突起が現れることが分かります。

相関係数が-0.5のときを見ると、銘柄Aを25%、銘柄Bを75%混ぜた時に、リスク6%・リターン4%の突起が出現する。これは面白いです。

銘柄Aのリスクは10%

銘柄Bのリスクは20%

AとBを組み合わせたポートフォリオのリスクは10~20%の間ではなくてさらに低い6%まで下げることができる。

これが現代ポートフォリオ理論と言う枠組みの中での分散投資でリスクを下げる」の本質なんです。

 

Sponsored Link



 

一方で相関係数が+0.5のとき(図の灰色の線)を見ると、突起が表れていません。つまり正の相関が大きい銘柄をどんな割合で組み合わせてもリスクを下げることはできない、ということです。冒頭の例えに戻ると、たとえ籠を分けたとしても籠同士でヒモでつながれていれば(=正の相関が大きければ)リスク分散の効果は小さいということです。

あるサイトによると、ある3か月間のAppleとAmazonの株価の相関係数は+0.67だったそうです。これだけ高い相関係数だと上のグラフで見たような突起はおそらく現れないはずです。

つまり両銘柄でポートフォリオを組んだとしてもリスク分散にはならず、どちらか1社の株価が不祥事や倒産で大暴落するといった超不測の事態への備えといった意味合いにしかならないということになります。相関係数が高い銘柄をどんどん加えていってもおなじことが言えます。

 

参考:

 

関連記事:

米国株と金 (ゴールド)を混ぜたポートフォリオはシャープレシオを高める

インデックス投資やるなら知っておくべき | 現代ポートフォリオ理論を分かりやすく解説

株価はどう動くか?幾何ブラウン運動の株価変動モデルを説明します。

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-資産運用

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

FIREするなら最低1.5億円は必要 (S&P500投資+年2%物価上昇の場合)

  前回の記事では、物価上昇を考慮すると資産1億円でFIREしたとして40年後に破産する確率は50%を超えることを紹介しました。ちなみにこの前提条件は、 ・S&P500に全額投資 ・ …

長期投資は7:3で上昇・下落の繰り返し。これが嫌なら投資やめるしかない。

  インデックス投資アドバイザーのカン・チュンドさんのブログにこんなことが書いていました。 「長期投資は7:3の世界」 長期投資は7:3の世界だと思います。7割の良い年と、3割の悪い年です。 …

GPIFの運用収益率だけみても意味がない。GPIFが掲げる「目標」を理解するのが大事。

  GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)の運用結果は開示されるたびにニュースになりますが、GPIFが何を目標として運用しているのかをちゃんと語っている報道は実はすくないんじゃないかな …

米国株50%+金50%ポートフォリオでリスクを下げられるか?

  myINDEXというサイトを過去記事で紹介しました。myINDEXでは「みんなのポートフォリオ」という機能でいろんなポートフォリオ (リスク資産の組み合わせ)のリスク・リターンを見ること …

S&P500長期リターンと幾何ブラウン運動モデルの比較

  過去記事からの引用。1950年1月以降のデータを使って1年リターン[%]を、1年・10年・20年・30年・40年の長期リターンを示したのは下のグラフです。 このデータをヒストグラムにして …

都内在住の30代サラリーマンです。資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に資産1億円を超えました。

このブログではインデックス投資の利点、運用シミュレーションや金融工学の記事を公開していきます。

趣味はミニベロ

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ