金融工学

S&P500つみたて投資は一括投資より元本割れしやすい理由を数字で説明する。

投稿日:2022年2月23日 更新日:




 

前回の続きです。

一括投資と比べてつみたて投資って何がありがたいのか?と聞かれれば、リスクを減らせるのがイイ!というのがザックリした(よくある)答えです。

ただし、この点はもう少し深堀する価値があると思っています。リスクを下げることに本当にメリットがあるのか、と。

 

S&P500 (リスク:7%、リターン:20%)に20年間投資した場合、一括のケースと積立のケースでリターンの確率分布がどうかわるかを示したのが下の図でした。(※合計投資金額は同じ) モデルは幾何ブラウン運動。

このグラフをパッと見た印象はこんな感じです。

・一括の方が大きく損する確率が高いが、つみたてと大きくは変わらなさそう。

・一括の方が高リターンを得る確率が高い。

そこで、定量的に分析してみます。

というわけで、この確率分布の累積確率分布を作成して、リターンが「半分以下」「元本割れ」「2倍越え」「3倍越え」・・・となる確率を見てみます。結果は下のグラフ。

私がこのグラフを見て面白いなと思ったのは、つみたての方が元本割れ確率が高いという点です。(一括:14%、つみたて:24%)

リターンが30%以下とか50%以下になる確率、つまり大損こく確率は一括の方が高いのですが、つみたてとの差はわずか1%程度です。

リターンが2倍とか3倍を超える確率は、もちろん一括ケースが圧倒的に高いです。

「つみたての方が元本割れ確率が高い」という直観に反する結果となった理由は、こんな感じだと思います。

・投資期間が長いほど元本割れ確率は下がる。(過去記事参照)

・逆にいえば、投資期間が短いほど元本割れ確率は上がる。

・つみたて投資とは、様々な投資期間の一括投資の総和 (20年間つみたてなら、20年一括 + 19年一括 + 18年一括 + ・・・)とみなせる。短期間投資が混ざることによって元本割れ確率が高まる。

この結果を見ると、S&P500に長期投資するのであればつみたてよりも一括の方がよい、というのが私の結論です。

ただし、今回の計算モデルには暴落の効果が入っていません。暴落を考慮するとどうなるかは、今後検証してみたいと思います。

 

関連記事:

つみたて投資でなぜリスクを減らせるのかを数字で説明する。

【予想外】暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの結果。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

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  1. アバター 投資家 より:

    累積確率分布とは、確率変数がx以下となる確率をプロットしたものですから
    xの増大に対して減少することはありません。

    リターンの横軸に「以下」「超え」が混在していることが間違いの原因であり
    30%以下、50%以下、80%以下、元本以下、2倍以下、3倍以下、4倍以下
    とすれば是正できると思います。さらに余裕があれば、横軸の間隔は対数値に
    比例させれば、ますます適切になると思います。

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。

      >累積確率分布とは、確率変数がx以下となる確率をプロットしたものですからxの増大に対して減少することはありません。

      はい、その通りです。

      >リターンの横軸に「以下」「超え」が混在していることが間違いの原因であり

      「間違い」とは「何に対する」間違いでしょうか?

      >30%以下、50%以下、80%以下、元本以下、2倍以下、3倍以下、4倍以下とすれば是正できると思います。

      高リターンを得る確率を語るには、「X倍以下」ではなく「X倍以上」を示す方が適切だと考えています。
      私なら、「2倍以下」の確率に興味はありません。「2倍以上」に関心はありますが。

      >さらに余裕があれば、横軸の間隔は対数値に比例させれば、ますます適切になると思います。

      これは知りませんでした。試してみます。

      • アバター 投資家 より:

        >高リターンを得る確率を語るには、「X倍以下」ではなく「X倍以上」を示す方が適切だと考えています。
        その趣旨であれば、棒グラフにする、または折れ線グラフのまま横軸を「2倍超え、3倍超え、4倍超え」に絞る、という方法があると思います。折れ線グラフは「連続した」独立変数に対応した従属変数の変化を示すものですから、今回のように「元本割れと2倍超え」の間に不連続がありますと使えないのです。

        >私なら、「2倍以下」の確率に興味はありません。「2倍以上」に関心はありますが。
        もちろん、持ちたい興味は各自の自由です。

        >「間違い」とは「何に対する」間違いでしょうか?
        折れ線グラフの正しい使い方に対する間違いです。

        >これは知りませんでした。試してみます。
        棒グラフの横軸は「佐藤さん、鈴木さん、田中さん」みたいに不連続ですから、等間隔になります。しかし折れ線グラフの独立変数は連続的ですから、その間隔も値に応じたものになります。たとえば横軸が「1時、2時、4時、5時」の場合、これを等間隔には並べないわけです。

        • chandra11 chandra11 より:

          ありがとうございます。

          そもそも私が折れ線グラフを選択したのがミスリードのもとですね。
          理解できました。

          あとで棒グラフに直しておきます。
          ご指摘ありがとうございます。

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都内在住の30代サラリーマンです。全資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に1億円を突破。S&P500とオルカンで運用中。NISAとiDeCoをフル活用。

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