前回の続きです。
一括投資と比べてつみたて投資って何がありがたいのか?と聞かれれば、リスクを減らせるのがイイ!というのがザックリした(よくある)答えです。
ただし、この点はもう少し深堀する価値があると思っています。リスクを下げることに本当にメリットがあるのか、と。
S&P500 (リスク:7%、リターン:20%)に20年間投資した場合、一括のケースと積立のケースでリターンの確率分布がどうかわるかを示したのが下の図でした。(※合計投資金額は同じ) モデルは幾何ブラウン運動。
このグラフをパッと見た印象はこんな感じです。
・一括の方が大きく損する確率が高いが、つみたてと大きくは変わらなさそう。
・一括の方が高リターンを得る確率が高い。
そこで、定量的に分析してみます。
というわけで、この確率分布の累積確率分布を作成して、リターンが「半分以下」「元本割れ」「2倍越え」「3倍越え」・・・となる確率を見てみます。結果は下のグラフ。
私がこのグラフを見て面白いなと思ったのは、つみたての方が元本割れ確率が高いという点です。(一括:14%、つみたて:24%)
リターンが30%以下とか50%以下になる確率、つまり大損こく確率は一括の方が高いのですが、つみたてとの差はわずか1%程度です。
リターンが2倍とか3倍を超える確率は、もちろん一括ケースが圧倒的に高いです。
「つみたての方が元本割れ確率が高い」という直観に反する結果となった理由は、こんな感じだと思います。
・投資期間が長いほど元本割れ確率は下がる。(過去記事参照)
・逆にいえば、投資期間が短いほど元本割れ確率は上がる。
・つみたて投資とは、様々な投資期間の一括投資の総和 (20年間つみたてなら、20年一括 + 19年一括 + 18年一括 + ・・・)とみなせる。短期間投資が混ざることによって元本割れ確率が高まる。
この結果を見ると、S&P500に長期投資するのであればつみたてよりも一括の方がよい、というのが私の結論です。
ただし、今回の計算モデルには暴落の効果が入っていません。暴落を考慮するとどうなるかは、今後検証してみたいと思います。
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累積確率分布とは、確率変数がx以下となる確率をプロットしたものですから
xの増大に対して減少することはありません。
リターンの横軸に「以下」「超え」が混在していることが間違いの原因であり
30%以下、50%以下、80%以下、元本以下、2倍以下、3倍以下、4倍以下
とすれば是正できると思います。さらに余裕があれば、横軸の間隔は対数値に
比例させれば、ますます適切になると思います。
コメントありがとうございます。
>累積確率分布とは、確率変数がx以下となる確率をプロットしたものですからxの増大に対して減少することはありません。
はい、その通りです。
>リターンの横軸に「以下」「超え」が混在していることが間違いの原因であり
「間違い」とは「何に対する」間違いでしょうか?
>30%以下、50%以下、80%以下、元本以下、2倍以下、3倍以下、4倍以下とすれば是正できると思います。
高リターンを得る確率を語るには、「X倍以下」ではなく「X倍以上」を示す方が適切だと考えています。
私なら、「2倍以下」の確率に興味はありません。「2倍以上」に関心はありますが。
>さらに余裕があれば、横軸の間隔は対数値に比例させれば、ますます適切になると思います。
これは知りませんでした。試してみます。
>高リターンを得る確率を語るには、「X倍以下」ではなく「X倍以上」を示す方が適切だと考えています。
その趣旨であれば、棒グラフにする、または折れ線グラフのまま横軸を「2倍超え、3倍超え、4倍超え」に絞る、という方法があると思います。折れ線グラフは「連続した」独立変数に対応した従属変数の変化を示すものですから、今回のように「元本割れと2倍超え」の間に不連続がありますと使えないのです。
>私なら、「2倍以下」の確率に興味はありません。「2倍以上」に関心はありますが。
もちろん、持ちたい興味は各自の自由です。
>「間違い」とは「何に対する」間違いでしょうか?
折れ線グラフの正しい使い方に対する間違いです。
>これは知りませんでした。試してみます。
棒グラフの横軸は「佐藤さん、鈴木さん、田中さん」みたいに不連続ですから、等間隔になります。しかし折れ線グラフの独立変数は連続的ですから、その間隔も値に応じたものになります。たとえば横軸が「1時、2時、4時、5時」の場合、これを等間隔には並べないわけです。
ありがとうございます。
そもそも私が折れ線グラフを選択したのがミスリードのもとですね。
理解できました。
あとで棒グラフに直しておきます。
ご指摘ありがとうございます。