資産運用 金融工学

「下がったら買う」は意味あるか?を定量的に検証する。

投稿日:2022年11月2日 更新日:




 

投資信託を長期積立投資する際に、毎月定額積み立てるドルコスト平均と、株価が下がってから買う方法、どちらのリターンが高いのか?

これは私も非常に興味がある問題だったので検証してみます。以下は前提条件。

(1) S&P500連動ファンドを想定。年率リスクとリターンはそれぞれ20%と7%とする。

(2) 株価は幾何ブラウン運動すると仮定、モンテカルロでシミュレーション。

(3) ドルコスト平均法では、毎月5万円を積み立てる。

(4) 「下がって買う」ケースでは、前月比n%下落したら5万円投資し、下落しなければ投資せずに現金5万円を保有しておく。n=1%、2%、3%、4%下落のケースを考える。

(5) 30年後の評価額を比較する。

ドルコスト平均法の場合:30年間で合計1800万円を積み立て

「下がって買う」場合:前月比n% (n=1,2,3,4)下落しないと投資しないので、合計投資金額は1800万円未満になり、残りは現金保有になります。ただし、下落したときに買い増しするので、得したっぽく感じます。

前月比2%下落で投資を決行する場合、30年後のリターンは以下のようになります。

投資チャンスは360回ありますが、そのうち投資を決行したのは平均145回でした。ドルコスト平均では1800万円投資できたのに対して、2%下落ルールだと、725万円しか投資できていないことが分かります。

投資金額が少ないほどリスク (ファンドの価格変動)に晒す金額が少なくなります。その場合、2%下落ルールのリターン (または30年後の資産)分布は毎月投資(ドルコスト平均)の分布に比べてシャープになるはずです。それが上のグラフで現れています。

グラフから平均値と中央値が分かります。ドルコスト平均と、前月比n% (n=1,2,3,4)下落ルールを比較した結果は以下の通りです。

どの下落幅でも、ドルコストに対して平均値・中央値ともに劣後しています。しかも、下落幅が大きいほど平均値・中央値ともに低下し、元本割れ確率が高まることが分かります。

株価が下がったときに買うと得する気がしますが、実際はドルコスト平均の方が勝っていることが分かりました。理由はシンプルで、リスクに晒す資産が減るからです。

2%ルールの場合、1800万円中725万円だけ投資し、残りの60%に相当する1075万円は現金保有です。言うまでもなくこの分は複利効果を受けられません。

じゃあ、「下がったら買う」はまったく意味がないか?というと、もっと良いやり方があると思います。それは、投資額を増やすのです。

例えば2%ルールの場合、総投資回数は平均145回でした。各タイミングで5万円しか投資しないから総投資額が減るのであって、総投資額が1800万円になるように投資を控えた分を次回の投資に反映すれば、もっとマシな結果になるはずです。その結果は次回。

 

関連記事:

資産回復でコッカラッス | 2022年10月末の資産

【衝撃】レバレッジはリターンの中央値を下げる。3倍レバレッジが危険な理由を定量的に説明。

【予想外】暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの結果。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-資産運用, 金融工学

執筆者:

関連記事

S&P500にレバレッジ3倍かけると元本割れ確率の減少が鈍い。【SPXL】【レバレッジETF】

  S&P500にレバレッジ3倍をかけるとレバレッジなしの場合よりもリターンの中央値が下がります。 過去記事より再掲。ちなみに中央値が最大化する最適レバレッジは1.75倍です。 中央 …

長期投資は7:3で上昇・下落の繰り返し。これが嫌なら投資やめるしかない。

  インデックス投資アドバイザーのカン・チュンドさんのブログにこんなことが書いていました。 「長期投資は7:3の世界」 長期投資は7:3の世界だと思います。7割の良い年と、3割の悪い年です。 …

リスク資産の最適な割合を計算するためのサミュエルソンの割合を説明する。

  前回の続きです。 株などのリスク資産を持っているとき、自分のポートフォリオ全体でリスク資産を何%にすべきか? そう問われれば「自分のリスク許容度に見合った割合にすべき」というのが教科書的 …

積立投資は「投資金額の時間発展の総和」と捉えると分かりやすい。

  一括投資と積立投資の違いは何か? 前者は手持ちの資金を初年度に一括で投資すること。後者は手持ちの資金を数回に分けて投資することです。これだけ読んでもふ~んとしか思いません。では図示してみ …

S&P500に6000万円投資してFIREしたときの破産確率をシミュレーションした結果。

  前回の続き。 毎月の生活費が20万円の場合、資産6000万円をS&P500インデックスなどで運用しておけば、仕事やめても生きていける (FIRE)という考え方があります。これは「 …

 

都内在住JTC勤務の30代サラリーマンです。全資産の95%をインデックス投資で運用しています。2024年3月に1億円を突破。世界経済の継続的成長を願いS&P500とオルカンで運用中。NISAとiDeCoをフル活用。

お問い合わせは:こちら

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ