金融工学

「インデックス投資が最適な投資法」はなぜ胡散臭く聞こえるのか?

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「インデックス投資は最適な投資法」というのは金融系の本なり雑誌なりを開けばよく書いてある文言です。

「その通り!」という人もいれば「他にもっといい方法がある!」という考え方もあります。

実はこの「最適」という言葉が紛らわしいんです。「最適」ってどういう意味なんでしょう?

「最適」というのは当然人によって異なります。

分かりやすい例は賃貸マンション探しです。「最寄り駅は職場から近いか」「駅からの距離」「広さ」「間取り」「周りにコンビニ・スーパーがあるか」「日当たり」「治安」など。これらは指標です。

例えば「広さ」という指標だけを重視するなら、単純に一番広い物件を選べばよい。

または「日当たり」と「駅からの距離」と「コンビニ有無」のように複数の指標を重視するなら、全指標に持ち点を割り振って、一番高い得点をとった物件を選べばよい。

確かに人によって最適は異なりますが、物件を選ぶには(意識的にも無意識的にも)このようにある手順をとっていることがわかります。

つまり「最適」とは「ある指標が最大になる」ということなんです。

 

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では「インデックス投資が最適」に戻ります。

ここでいう「最適」とは「シャープレシオが最大」ということ。

シャープレシオとはリターンをリスクで割った値です。つまり「シャープレシオが最大」とは「リターンが大きくて、同時にリスクが小さい」ということ。

インデックス投資 (=特定の国やエリア、または全世界の株の時価総額加重平均)のシャープレシオが最大であることは現代ポートフォリオ理論で証明されています。

つまり「インデックス投資が最適」という言葉をStep by Stepで読み解くと次のようになります。

(1) 合理的な投資家はリスク (=価格変動)が小さく、かつリターンが大きいものを好むはずであり、

(2) つまりシャープレシオという指標が大きいものであり、

(3)理論によればシャープレシオが最大になるのは全リスク資産の時価総額加重平均だから、

(4) インデックス投資が最適

ここまで見ると、「インデックス投資が最適」を胡散臭いと感じる理由は以下だと思います。

(1) シャープレシオが最大であることに興味がない。つまりリターンは小さくてもよい。

(2) とにかくリターンが大きければよい。リターンが大きいものは一般的にリスクも大きいが、リスクが大きくても気にしない。

(3) 実際の市場を現代ポートフォリオ理論で説明できるとは思わない。所詮机上の空論。

(1)は「投資で大事なのはリターンだけではない」という価値観に立脚してると思います。価値観の問題なので割愛。

(2)は市場平均を上回る成績を叩き出せると信じている人の考え方。確かに実現できている人は存在しているので、「インデックスは最適」は胡散臭く感じるのは理解できます。(ただし、それをできる可能性は低いので私ならこういう思考は持てない。)

(3)に関しては色々と議論があります。現代ポ理論には色々と前提があるので、その前提が実際を反映していない限り「机上の空論」だと考えるのは理解できます。だからといって他に理論的に完成された理論がない以上、「インデックス以外の××投資法」に対して「最適」という言葉は使えないと思っています。

繰り返すと、インデックス投資は「シャープレシオが最大になるポートフォリオが最適」という理論に立脚した投資法です。

確かに前提条件の実際の乖離に議論の余地はありますが、「何が最適なのか」を厳密に定義しています。

インデックス投資がなぜ最適と言われるのかは、「最適」の意味と背景を理解するのが重要だと思います。

 

余談:

考えが浅い人ほど「最適」という曖昧な言葉を使います。

新入社員の頃の私:「・・・この方法が最適と言われてまして~」

鬼上司「ハ?最適って何よ?誰にとって最適?曖昧な言葉使うなや!」

新入社員の頃の私:「アワワワワ・・・・・(泡吹き)」

 

関連記事:

なぜ全てのリスク資産の時価総額加重平均が最適なポートフォリオなのか?その理由と理論的背景。

 

 

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