金融工学

「リスク=損しやすさ」は間違いです。リスクの意味は正規分布で捉えると分かりやすい。

投稿日:2020年10月24日 更新日:




 

「その金融商品に投資するのはリスクが大きいのでやめたほうがいい」と聞くと、「この商品は損しやすいのか」と解釈してしまいやすい。しかしながら「リスク=損しやすさ」という考えは正しくありません。

リスクとは一般的に「不確実性」という意味です。ISO9001という品質マネジメントシステムの国際規格がリスクについて分かりやすい定義をしています。それによるとリスクとは「期待されていることから、好ましい方向又は好ましくない方向に乖離すること」です。

これを金融商品のリターン分析に適用すればこう考えることができます。リスクが小さいとは期待するリターンを超える確率とリターンを下回る確率が共に小さい。逆にリスクが大きいとは、期待するリターンを超える確率も下回る確率も大きい。

ポイントはリスクが大きいと損しやすくなるだけではなく、リターンも大きくなるということでしょう。だから「リスク=損しやすさ」は成立しないというわけです。

 

Sponsored Link



 

言葉で書くよりもリスクの大きさを正規分布でとらえる方が分かりやすい。金融工学では正規分布の標準偏差(広がり幅)をリスクと定義して議論を展開するからです。

下の2つのグラフは異なる2つのリスクをもつ正規分布です。平均リターンは0%、リスクはそれぞれ5% (上)と20% (下)です。

リスクが小さいと分布の幅が狭い。幅が狭いと言うことは平均リターンから乖離するリターンの出現確率が小さいということです。極端な例としてリスクがゼロということは、幅がゼロ(数学的にはデルタ関数と呼ぶ)なので、100%の確率で平均リターンを得る。

逆にリスクが大きいと分布の幅が広い。幅が広いと言うことは平均リターンから乖離するリターンの出現確率が大きいということです。

グラフを見れば冒頭の「リスク=損しやすさ、は正しくない」というのが分かるでしょう。なぜなら、リスクが5%、20%どちらの場合でも損する=元本割れする確率は共に50%だからです。

 

Sponsored Link



 

それでは「損しやすさ」とは一体どのように見積もるのか?それを示したのが下の図です。損しやすさ、つまり元本割れする確率は正規分布のリターンがゼロ以下になる部分の面積と等しくなるのです。

この面積はどんなときに大きくなるか?それは正規分布全体が左(リターンが低い方)に寄っていて、かつ幅が広い場合でしょう。言い換えれば平均リターンが小さくてリスクが大きい場合に元本割れする確率が大きい。逆に平均リターンが大きくてリスクが小さい場合には元本割れ確率が小さくなる。

つまり、損しやすさは平均リターンとリスクの組み合わせによって決まるということです。もう少し正確にいうと、平均リターンとリスクは時間とともに変化するので、損しやすさは平均リターン、リスク、投資期間の組み合わせで決まるといえるでしょう。

まとめると、こういうこと。

損しやすさを決めるのは:

× リスク

〇 リスク、平均リターン、投資期間の組み合わせ

補足すると、リスクのうち期待しているよりも望ましい方向に物事が進むこと(プラスのリスク)を好機と呼びます。リスクが大きな金融商品に投資して高リターンを得る行為とは、好機を利用して高いリターンを得ることだと解釈できます。

 

関連記事:

インデックス投資やるなら知っておくべき | 現代ポートフォリオ理論を分かりやすく解説

 

記事が役に立ったらクリックお願いします↓

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

-金融工学

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

リスク資産の最適な割合を計算するためのサミュエルソンの割合。

  前回の続きです。 株などのリスク資産を持っているとき、自分のポートフォリオ全体でリスク資産を何%にすべきか? そう問われれば「自分のリスク許容度に見合った割合にすべき」というのが教科書的 …

現金:S&P500の最適比率が分かる早見表 (マートン問題と相対的リスク回避度で計算)

  過去記事でS&P500に投資した際の最適比率を計算する方法を、マートンのポートフォリオ問題を用いて説明しました。 マートン・社畜の式: S&P500の最適比率 = 1.7 …

暴落を取り入れたS&P500投資シミュレーションの方法。幾何ブラウン運動+ジャンプ過程。

  過去記事で書いたように、S&P500投資シミュレーションに暴落の効果を取り入れたシミュレーションをやってみます。 そのモチベーションは過去記事で書いたように、現実世界では暴落が発 …

リスクの時間分散効果というウソ。長期投資でリスクを低減できない理由。

  リスク資産は短期でもつよりも長期で持つ方がリスクが下がるという説明がされることがあります。これには色々議論があるようですが、私は間違いだと思っています。 長期投資でリスクが下がることを説 …

資産5000万あればインデックスの運用益のみで生活費をまかなえるか。

  過去記事では米国S&P500のリスク・リターンをそれぞれ20%・7%と仮定して色々考察しています。 この値を株価変動モデルに代入すれば将来の平均リターンを推定することができます。 …


チャンドラです。

都内在住の30代前半サラリーマンです。このブログではインデックス投資の利点、運用成績、運用シミュレーションや金融工学の記事を公開していきます。

メディアインタビュー記事:こちら

投資運用成績は:こちら

投資を始めた理由は:こちら

お問い合わせは:こちら


にほんブログ村 株ブログ インデックス投資へ

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ