前回の続きです。
「ライフサイクル投資術」の計算ステップを書き換えてみると、
(1) 下のグラフからRRA (相対的リスク回避度)を求め、
(2) リスク資産のリスク・リターンから最適レバレッジを計算し、
(3) 最適レバレッジをRRAで割ればリスク資産の最適な比率を計算できる。
ちなみに、サミュエルソン割合=リターン / (リスクの2乗 x RRA)の式はマートンのポートフォリオ問題から導出されます。
無リスク資産 (現金・債券)とリスク資産 (株)を保有するとき、リスク資産の最適な割合はサミュエルソン割合、つまりリターン / (リスクの2乗 x RRA)で計算できる。
これは「マートンのポートフォリオ問題」から導出できます。
では、「マートンのポートフォリオ問題」とは何か?
マートンのポートフォリオ問題とは、「個人の期待生涯効用を最大にするように最適な消費と最適な資産の組み合わせを決定する」という問題です。
「期待生涯効用」が分かりにくいと思うので数式なしで説明すると:
効用:得た利益に対する個人の主観的な満足度
期待効用:効用 (満足度)の期待値
期待生涯効用:各時点の消費の効用と保有資産の効用の和の期待値
ざっくりいえば、「毎年金を使って気持ちよく感じる度合いと、毎年口座に残ってる資産で気持ちよく感じる度合いの、それらの合計の期待値」です。
なぜ「期待値」なのか?それはリスク資産の価格が変動するためです。資産価格の変動は幾何ブラウン運動に従うと仮定します。
この問題は、工学の世界では確率的最適制御問題の一つと位置付けられています。
最適制御問題とは、時間変化する対象をどうやって最適に制御するか?という問題。一例として「月面に接近するロケットを最小限の燃費消費で着陸させるにはどのようにロケットを制御するか?」の月面着陸問題があります。
マートン問題の場合は、リスク資産価格がランダムに変動するために、古典的な最適制御問題に加えて確率的な要素が入ってくるのです。
この問題を解くのはかなり難しい。
イメージだけザックリ言えば、「各時点の消費」と「各時点のリスク資産の比率」を変数と考えて、ちょっとずつ変化させながら期待生涯効用を最大化する組み合わせを捜していきます。
この期待効用最大化問題からどうやってリターン / (リスクの2乗 x RRA)が求められるか?
それは次回の記事で紹介します。
参考:
不確実性の下での最適消費・資産選択問題 板垣有記輔
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