私の考えでは、投資で一番難しいのは「何に投資すべきか」ではなく「いくら投資すべきか」です。
インデックス投資が長期投資で「最適」という答えはすでに理論でも確立されています。「最適」の意味は過去記事参照。
「短期間で大きな資産を築きたい」とか「市場平均をなんとしても超えたい」を除けば、全世界インデックスか米国S&P500に投資しておけば間違いない。
一方で、「いくら投資すべきか?」というのは難しい問題です。もう少し正確に言えば、「全資産のうちリスク資産の比率を何%にするべきか?」です。
私が知る限り「リスク許容度に応じて投資しよう」とはよく聞くけど「リスク許容度を知る方法」はどこにも書いていません。
何か良い方法がないものかと思って、過去記事で導出した下のグラフです。
S&P500への投資を前提として「ライフサイクル投資術」とマートンのポートフォリオ問題から求めたS&P500の投資比率を計算したもの。このグラフからリスク資産の投資比率を読み取るのが、一応筋が通った計算方法だと思います。
リスク資産の最適比率を計算する方法はマートンのポートフォリオ問題。過去記事から引用すると、
マートンのポートフォリオ問題とは、「個人の期待生涯効用を最大にするように最適な消費と最適な資産の組み合わせを決定する」という問題です。
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マートン問題のポイントは期待生涯効用の最大化です。結局何をやってるかというと、効用 (=個人の主観的な満足度)の最大化なんです。
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詳細は参考文献を参照して頂くとして、リスク資産の最適比率は:
最適比率 = リターン / (リスクの2乗 x RRA)
過去記事で書いたようにこれを書き換えると、
最適比率 = 最適レバレッジ / RRA
RRA=相対的リスク回避度
相対的リスク回避度は個人によって異なりますが、その値が大きいほどリスクを嫌います。RRAの値は「確率50%で資産が2倍か、確率50%で資産がk%減るとき、あなたが許容できるkの値は?」という問いから測ることができます。
だから、「リスクに晒せる資産の上限」から「リスク資産の最適比率」が定量的に計算できるのです。(再掲)
ここまで見たように、リスク資産の最適比率はマートンのポートフォリオ問題や効用関数などを使って定量的に計算できるものです。定量的に計算できる以上、出てくる答えは合理的であるはず。
であれば、現金を一切投資にまわさずにすべて預金するのは、投資に慣れた人間、リスクに抵抗がない人間から見ればおかしなことやってるように見えても、リスクに晒せる資産の上限が0% (つまりRRA=∞)であれば合理的であると言えます。
「何に投資するのが最適か?」はシャープレシオを最大化の観点から言えばインデックス一択です。しかし、「いくら投資するのが最適か」はリスク許容度 (正確に言えば相対的リスク回避度)によります。
個人の主観たるリスク許容度に依存する「いくら投資すべきか?」問題こそ、人によって答えがバラバラになりやすいわけであって、「投資しないのはバカ」という考えは違うんじゃないかな、と思うんです。
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