「リスク (神々への反逆)」からの抜粋。レビュー記事はコチラ。
マーコビッツは従順に図書館に行き、腰を下ろして本を読み始めた。この本の最初の文章が彼に魔法をかけた。
すなわち、「現在の市場価格の下で、すべての銘柄が同等に魅力的であると考える買い手は皆無である・・・それどころか、買い手は「最もお買い得」な銘柄を探すものである。」
その後何年も後に、マーコビッツは私にその時の反応を語りながら、次のように回想していた。「収益のみならず、リスクも問題になるはずだという考えが閃いたのです。」
この考え方は、1990年代ではかなり当たり前になっているが、1952年当時はほとんど関心を惹かず、さらに言えば、マーコビッツの論文が出てから20年間、日の目をみなかった・・・
当時、証券の運用成績に関する判断は、投資家がどれほどの利得を得たか、あるいは損失を被ったかで表されていた。
リスクは無関心だった。
マーコビッツが考案したポートフォリオ理論の基本コンセプトは、リターンだけでなく、リスクという新たな視点をポートフォリオ選択の要素に加えたという点です。つまりこういうことです。
(1) リターンだけでなくリスクを導入し、
(2) リターンを「望ましいもの」、リスクを「望ましくないもの」と捉え、
(3) リターンを最大化して同時にリスクを最小化するポートフォリオは、
(4) 互いに異なる動きをする資産に分散投資することで構築できる。
マーコビッツが登場する前から「卵はひとつの籠に盛るな」という格言はありましたが、マーコビッツによってこれが定量的に証明されました。
バーンスタインの本に記載されているように、マーコビッツ登場以前に株式投資においてリスクという概念がなかったというのは注目すべきだと思います。
マーコビッツの登場によってポートフォリオにおけるリスクの重要性が知れ渡ったにも関わらず、2020年代になってリスクを考慮せずに投資が語られているのは、マズいんじゃないかと。
過去記事にも書きましたが、よくやるミスリードは「年率7%のS&P500に10年投資したら元本2倍」ってやつです。
これは複利の便利な公式「72の法則」を適用すればそういう結果になるんですが、「リスクがゼロの場合に限る」という不都合な前提条件が隠されています。
ちなみにリスク20%を適用すれば元本2倍になる確率は37%。
リスクを考慮せずに分かりやすい公式だけに飛びついたら、「え?そうなの?」となるいい例です。
過去の賢人があれだけリスクの重要性を説いてるんですから。リスクが考慮されているかは自分の頭で考えるのが重要ですね。
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