経済学にはとことん疎い私が経済学関係の本で、コレは面白いな!と感心したのが「物価とは何か」という本。これは名著リスト入りだな・・・。
私が面白いなと思ったのが物価を決める大きな要素が人々のインフレ予想だということ。スーダンの例を用いて説明されています。
スーダンでは、内戦や繰り返し起こる干ばつによって国家財政がひっ迫、財政赤字を賄うために大量の通貨が発行されたために、年間インフレ率が100%を超えていたそうです。
ここで面白いのが、異常なインフレ状態でも人々の生活は壊滅的に崩壊することなく通常通りの生活が営まれていた点。この理由は、人々のインフレ予想が一致していたからなんです。
インフレ下のスーダンで、商品を売ろうとする人々が何を考えていたかといえば、仕入れ値の上昇を売値に転嫁することです。・・・同業他社の値段に合わせることが大事です。さらに、従業員の賃金も適切な率で引き上げないと、あらゆるものが値上がりしているのですから、彼らの生活が立ち行かなくなります。かくして、店の経営者は、仕入れ値、同業他社の値段、賃金をにらみながら、それらと同率で販売価格を引き上げます。・・・
どの店舗も同じ行動をとるので・・・各企業の売上と消費者の賃金は実質的に大きく変わることはないため、スーダンの日常は辛うじて維持されてきました。
すべての価格(賃金も含む)が一律に上昇すれば、上昇率が非常に高くても、致命的なダメージにならないということです。
全ての価格が一律に上昇するには、商品間に調和が必要で、調和を作り出すのが人々の予想の一致というわけです。
ほぼ全員が同じ物価上昇を予想することで、商品価格も賃金も上がるんですね。
「予想」が重要なことを見た後、話は自然失業率仮説の式 (インフレ率 = インフレ予想 – a x失業率 +b)に移り、そしてインフレ率をコントロールするためにインフレ予想を中央銀行が誘導するインフレターゲティング、低インフレ実現のために失業率上昇を厭わないタカ派総裁へ・・・。
物価って非常に奥が深いです。物価を決める要素が物価を予想する人同士の相互作用という点は、銘柄の相関関係が最適ポートフォリオを決定するのと同様、各要素だけを見てもダメで要素間の作用を重視する複雑系の考え方が根底にある点で共通していると思います。
興味あれば読んでみてください。
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