金融工学

投資でシャープレシオ単体を使うことに意味はない。リスクと組み合わせて元本割れ確率を分析する。

投稿日:2020年11月26日 更新日:




 

ポートフォリオのシャープレシオはリターンをリスクで割ったものとして定義されています。例えば米国S&P500の年平均リターンは7%、リスク (標準偏差)は20%なので、シャープレシオは0.35です。

シャープレシオは投資の効率性を評価する指標として使われています。シャープレシオが大きいほど投資対象として好ましい。なぜかというと、リターンが大きいほど、リスクが小さいほどシャープレシオが大きくなるからです。

そこで気になるのが投資対象をシャープレシオの大小だけで評価していいのか?という点です。例を挙げてみます。

ファンドA: リスク 30%   リターン 6%

ファンドB: リスク 40%   リターン 8%

ファンドC: リスク 50%   リターン 10%

いずれもシャープレシオは0.2で等しい。どれを選べばいいんだろう。

ここでは元本割れ確率という観点で考えてみたいと思います。理由は多くの人はより高いリターンを得るよりも元本割れを嫌う傾向にあるからです。

結論からいうとシャープレシオが一定でもリスクが高い方が元本割れ確率を下げることが出来るのですが、シャープレシオ、リスク、元本割れ確率の間にある関係があることを紹介します。

 

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先ほど挙げたシャープレシオが0.2の3つのファンドを再掲します。

ファンドA: リスク 30%   リターン 6%

ファンドB: リスク 40%   リターン 8%

ファンドC: リスク 50%   リターン 10%

この投資期間に対する元本割れ確率を示したのが下のグラフです。

ファンドA: 元本割れ確率は減る (青色の曲線)

ファンドB: 元本割れ確率は一定 (オレンジ色の曲線)

ファンドC: 元本割れ確率は増える (灰色の曲線)

リスクの大きさは A < B < Cなのでリスクが増えるほど元本割れ確率が大きくなるのは直観的にも理解できます。ただし注目すべきなのはファンドCの元本割れ確率が時間とともに増加している点です。

もう少しいうと、シャープレシオを固定してリスクを増やしていくと、あるリスクを境に元本割れ確率の投資期間に対する変化の向きが変わるのです。その「境目」となるのが図でいうファンドBです。

では、もう少し一般化できないか?つまり「シャープレシオとリスクにどんな関係があれば元本割れ確率の上昇を抑えることができるのか?」を知りたい。

 

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結論だけいうと、リスクを2で割った値とシャープレシオの大小が元本割れ確率の上昇傾向を決めます。言い換えると、リスクを2で割った値がシャープレシオよりも小さければ元本割れ確率は小さくなり、大きければ元本割れ確率は大きくなります。

式で書くとこうなります。

(1) 0.5 x σ < SR: 元本割れ確率は小さくなる

(2) 0.5 x σ > SR: 元本割れ確率は大きくなる

σ: リスク、SR: シャープレシオ

つまり元本割れ確率の上昇を抑えるには(1)を満たすファンドを選べばよい。ちなみにS&P500はσ=0.2 SR=0.35なので、(1)を満たします。

今回はシャープレシオとリスク、元本割れ確率がどのように関連するかを紹介しました。例で挙げたように、シャープレシオだけに着目すると、どの投資対象が自分にとって最適なのかを判断できなくなります。シャープレシオにリスクを組み合わせることで、元本割れ確率の時間変化が見えてくるのです。

 

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