人前でプレゼンしたり質疑応答に答えるのって難しいですよね。私も苦手です。
過去に仕事の関係で100人くらいの前でプレゼンする機会があったのですが、リハーサルをやってそれを見た上司からおまえのプレゼンはカス。眠たくなるだけ。と切り捨てられたことがあります。苦い思い出です ww
米国の前大統領のオバマ氏もはじめは苦手だったそうです。苦手というか、オバマ氏自身は「人に説明したり質問に答える」のは得意だったんですが、「メッセージを伝える」重要性を理解できていなかった。
彼の回顧録「約束の地」からの抜粋。大統領選の候補者との公開討論が上手くいかず、終了後のスタッフのアレックスとの会話。
「問題は」と彼は言った。「質問に答えつづけようとしていることです。」
「それが要点じゃないのか?」と私は言った。
「いいえ、バラク、それは要点ではありません。大切なのは、メッセージを相手に届けることです。あなたの価値観は?あなたの優先順位は?有権者はそれを知りたがっているのです。いいですか、モデレータが繰り出してくる質問の半分は揚げ足取りです。そしてあなたがすべきは、その罠にはまらないことです。どんな質問をされても、まず何か一言返して、いかにも答えたように思わせてから、あなたが主張したいことを話すのです。」
「ばかばかしい」と私は言った。
「そのとおりです」と彼は言った。
私はアレックスに対して、それ以上に自分自身に対して腹を立てていた。しかし討論会の映像を見返すにつけて、アレックスの意見は否定できないと思うようになった。討論における最も効果的な答えとは、何かを明らかにするものではないらしい。感情をかきたてるものであり、敵を特定するものであり、有権者対して、自分こそが居並ぶ候補者の誰よりもあなたの味方であり、これからもずっとそうだとメッセージを送るものなのだ。・・・
好むと好まざるにかかわらず、人は事実よりも感情で動く。否定的な感情ではなく肯定的な感情をかきたてること、理性と堅実な政策によって人間本来のよい部分を支えて、演技をしながらもやはり真実を語ること。それが、私の超えるべきハードルだった。
結局のところプレゼンの目的は何なのか?という点が重要なんです。当たり前ですが。
例えば消費税増税を反対するプレゼンして、そのプレゼンに対して徹底的に議論するのが目的なのであれば、そこで挙がった全ての質問に論理を一切破綻せずに答える必要がある。
一方でプレゼンや公開討論の目的が、それを通して支持者を獲得することであれば、やり方が変わってきます。「人は事実よりも感情で動く」のだから、(ウソを言ってはいけないが)感情を揺さぶる点を重視しないといけない。
だから、アレックスが言うように「相手の質問に答え続ける」のは有効ではないんです。質問に真面目に答えるも大切ですが、それは二の次。真面目で論理的な人ほど陥りそうなワナですね ww
私が最近聞いたスピーチで心底うなったのがコロナ禍でのエリザベス女王のスピーチですが、ここには「感謝」「尊敬」「協同」の3つが全て入っていました。興味ある人は見てみてください。
ところで、私のプレゼンをカスと切り捨てた上司のコメントも同様でした。複雑な内容なんて質疑応答で答えればいいんだから、シンプルに話せ。スライドもシンプルにしろ。あとアイコンタクトとプレゼンの「間」取りは絶対怠るな。苦手なら死ぬ気で練習しろや、でした。
その結果、プレゼンは多くの人から「分かりやすかった」と大成功。限られた時間内に細かいところまで全部説明したい、なんてエゴなんですよ。感情に訴えるシンプルなプレゼンが重要だと思い知りました。
↓アレックスはエエこと言うやん。
約束の地 大統領回顧録1 下【電子書籍】[ バラク・オバマ ]
記事が役に立ったらクリックお願いします↓
今思うに人をコントロールしたりされたりしなきゃいけない状況から解放されたというのが精神的に一番メリットが大きいように思う。社会を運営する上でしかたないこととは言えやはり心に悪影響をおよぼす行為であることは確かなんじゃないかと思う。