資産運用 金融工学

「損失回避の法則」に従えば投資はリスクより元本割れ確率で議論した方が分かりやすい

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人が株式投資をする目的は、何と言っても資産を増やすためでしょう。

ここで一歩踏み込んで「資産をどのように増やしたいか?」と問えば、「資産を2倍や3倍に増やしたい」というよりも「資産を増やしたいが元本割れは絶対に嫌だ」と考える人のほうが多いと思います。

私自身もインデックス投資をしていますが、資産を増やしたいのは当然としても、それ以上に元本割れだけは絶対に避けたいと思っています。理由は簡単で、長期国債買っておけば微々たるものとはいえ資産を確実に増やせるのに、わざわざリスク取って株式投資して元本割れしたら何のためにリスク取ってるんだ、と感じるからです。言い換えると、元本割れしてなければ損してないわけだし、まあいいかと諦めもつく。

株式投資では、投資対象のリターンの他にリスクも考慮に入れます。リスクとはその投資対象の株価のばらつきを意味するので、リスクが大きいほど株価の動きが大きく、逆に小さいほど株価が安定している。

では、この「リスク」と「元本割れ確率」はどう関係するのか?リスクが大きければ株価のばらつきが大きいので元本割れ確率が大きいことは感覚的に分かるでしょう。逆もまたしかり。

金融工学では、ある投資対象のリスクとリターンが分かれば元本割れ確率を計算することができます。だから、何よりも元本割れを嫌う投資家はリスクの大小に着目するよりも、元本割れ確率を計算してその確率を受け入れることができるかを検討したほうがいいと思っています。

何故ならばそっちの方が「リスクが大きいから元本割れしやすそう」とフワフワした議論をするよりもストレートなアプローチだからです。では、一例を挙げてみましょう。

 

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私は米国S&P500に連動するインデックス・ファンドに投資しているので、S&P500の元本割れ確率を計算してみます。S&P500の過去の実績からリスク20%、リターン7%として計算します。株価はこの記事で解説している株価モデルに従うと仮定します。

このモデルを使用すると株価は対数正規分布に従うことが分かります。この分布は時間が経過するほど形状が変わっていきます。

では元本割れ確率はどのように計算するか?元本割れ確率を計算するには、このグラフのリターンが1.0倍よりも小さい領域の面積を求めればよいのです。初年度に一括投資するとして各年度に元本割れする確率を示したのが下のグラフです。

リスク:20% リターン:7%

元本割れ確率は時間と共に下がることが分かります。この理由は時間と共に株価の分布の高リターンを得る確率(グラフの右の裾)が立ち上がってくるために、リターンがプラスになる確率(つまり元本割れしない確率)が大きくなるためです。そして20年後の元本割れ確率は13%となることが分かります。

では仮にリスクが半分の10%になるとどうなるか?それを示したのが下のグラフです。比較のために縦軸のスケールをリスク20%のグラフと統一しています。

リスク:10% リターン:7%

このとき20年後の元本割れ確率は0.18%まで下がることが分かります。元本割れ確率が異常に小さいですが、これはリターンを7%のまま維持したために、リスクに対するリターンが大きいからです。リターンをリスクで割った値はシャープレシオと呼びますが、シャープレシオが大きいと元本割れリスクが小さくなると言えます。

 

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というわけでまとめると:

(1) 元本割れリスクは時間経過とともに下がる

(2) 米国S&P500一括投資の20年後元本割れリスクは13%

(3) シャープレシオが大きいと元本割れリスクは下がる

人間が「得する」よりも「損しないこと」を重視する傾向は、損失回避の法則と呼ばれます。損しないことを重視するのであれば「リスク」ではなく「元本割れ確率」に注目すべきなんです。

S&P500のリスクが20%と言われたってピンとこないでしょう。その代わりに「20年後の元本割れ確率が13%」と言い換えるとイメージしやすくなります。

そして13%を受け入れることができるのであれば、S&P500に投資すればいい。受け入れられないのであれば、よりシャープレシオが小さい金融商品を探せばいい。元本割れ確率は意思決定を容易にする指標なんです。

 

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