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その方法は現実的なのか? PCR検査

投稿日:2020年4月19日 更新日:




 

私の仕事は技術的なサービス業。顧客の「こんなサービスを提供してほしい」という要望に対して技術的な提案をしていくのが仕事です。時には何千ページもある契約書をドサッと渡されて、「こんなサービスが欲しいからプロポーザル出してくれ。基本的に契約からの逸脱は認めないから。」と言われてからプロポーザルを出し、OKをもらったら実作業にとりかかる。

この仕事を始めて叩き込まれたことは顧客の要求や自分のプロポーザルが実現可能な内容になっているかを常に考えろということ。実現可能ではないものを「はい、できます」と言って引き受けてしまうと、後で「やっぱり出来ません」なんて言えばボコボコにされるからです。

顧客というのはいつの世もワガママで、自分が欲しいと思っていることを無邪気に契約に入れてくることが多い。従って、プロポーザルを出す側の人間は、何が実現可能で何が難しいかを明らかにして顧客に真摯に説明していく必要がある。顧客が理論家で実務を知らない人間であればあるほど、その作業に費やす時間とエネルギーは多くなる。

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簡単な例を挙げてみましょう。これはフィクションです。ある顧客がこんなものが欲しいと言ってきたとします。「私は鳥のように空を飛びたい。空を飛ぶためのデバイスが必要だ。それは頭に載せてスイッチを押すだけで空を飛べるもので、サイズと重さはスマホと同じくらい。1個の直径200mm以下のプロペラが高速回転することで空を飛ぶ。性能は重さ100kgの人間が最低2時間継続して飛行できるものとする。垂直離着陸できる機能を有すること。飛行中の方向転換はスマホの専用アプリで操作できる仕様とすること。デバイスを納入する前に必ず人が装置して性能試験を最低5回行うこと。このデバイスを1個1000万円で6か月以内に納入すること」。要はタケコプターが欲しいということ。

こんな要求に対してどんなふうに反応すればいいだろうか。「いやいや、それアニメの世界ですよ ww 」などと回答すれば顧客はどう思うか。「おれは日本のアニメでこれと同じ物を見たことがある。今はスマホでドローンを飛ばすこともできる時代なのに、何故できないんだ?お前は世界中の大企業やベンチャーに問い合わせて調べたのか?」と追い返される可能性が高い。(ちなみに太字の部分は顧客にマジで言われたことあります ww)。顧客は無邪気なのだから「できません」という回答は許されないのだ。だから顧客の要求が「なぜ実現可能でないか」を明確にして説明する必要があるのです。

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「お客さん、そのようなデバイスを納めることができないのはいくつか理由があるんですよ。(1) まず100kgの人間を2時間も飛行させるには大容量のバッテリーが必要です。候補は●●社のリチウムイオンバッテリーですが、重さが50kg近くにもなります。こんなものを頭に載せて1時間も飛行するのは危険です。肩に背負っても脱臼してしまいます。お客様をそのような危険にさらすわけにはいきません。」

「(2) 頭の上でプロペラを回すと、角運動量保存の法則が働いて飛行者自身が回転しまいます。角運動量保存の法則を知らない?自転車は車輪が回転しているときは安定していますが、回転していないときは立ちませんよね。つまり車輪が回転しているときに力が発生するんです。それと同じで頭の上のプロペラが高速回転すると飛行者も高速回転して、安定した操縦ができません。」

「(3) スマホのアプリで方向転換できるような仕様とありますが、方向転換するためにはプロペラ1個では足りません。ドローンやヘリコプターのように他にも方向転換用のプロペラを取り付ける必要がありますが、頭の上には予備のスペースがありません。候補としては肩の上でしょうか。でも回転するプロペラが顔に当たる可能性があるので、現実的ではありません。」

「(4) 納入前に有人で飛行試験とありますが、これは失敗した場合の人命に関わることです。弊社のコンプライアンスに反することなので引き受けることはできません。」

「以上が、小型デバイスで空を飛べない理由です。代案としてはヘリコプターですが、価格と納期がターゲットに入りません。また操縦に訓練が必要なので、これも現実的ではないでしょう。」

「その代わりこうしてはどうでしょう。契約書に記載している通り、空を飛ぶのがお客様が一番の関心事だと理解してます。そうであればデバイスを納入する代わりに、ヘリコプターの試乗体験ができる場所があるので、そこの試乗チケット10回分を提供するというのはどうでしょう。これなら現実的だし、価格もおさえることができます。」

最後のヘリコプター試乗体験チケットは無理やり押し込んだ感がある代案ですが、顧客の要望が「デバイス」よりも「空を飛びたい」ことに重点を置いているのであれば、承諾される可能性が高い。契約書にゴチャゴチャ書いていようが、一番の目的は空を飛びたいことであって、頭の上のプロペラ云々は「ドラえもん」を見て「これいいな!」と思って契約書に書いただけかもしれないからです。まさに「あんなこといいな、出来たらいいな」の世界なんです ww

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実はここまでが前置きです。何故こんなことを長々と書いたかというと、コロナウイルスに関する神奈川県医師会の「お願い」のメッセージを見たからです。私も含めて想像力を働かすのが苦手な人間はぜひ読んで噛みしめておいた方がよい。

この中でPCR検査の拡大論に対する医師会の見解が書いています。

「医療関係者は、もうすでに感染のストレスの中で連日戦っています。その中で、PCR検査を何が何でも数多くするべきだという人がいます。しかしながら、新型コロナウイルスのPCR 検査の感度(編注:感染者に陽性の検査結果が出る割合)は高くて70%程度です。つまり、30%以上の人は感染しているのに『陰性』と判定され、『偽陰性』となります。検査をすり抜けた感染者が必ずいることを、決して忘れないでください。

さっさとドライブスルー方式の検査をすればよいという人がいます。その手技の途中で、手袋や保護服を一つひとつ交換しているのでしょうか。もし複数の患者さんへ対応すると、二次感染の可能性も考えなければなりません。

正確で次の検査の人に二次感染の危険性が及ばないようにするには、一人の患者さんの検査が終わったら、すべてのマスク・ゴーグル・保護服などを、検査した本人も慎重に外側を触れないように脱いで、破棄処分しなければなりません。マスク・保護服など必須装備が絶対的に不足する中、どうすればよいのでしょうか。次の患者さんに感染させないようにするために、消毒や交換のため、30 分以上1 時間近く必要となります」

「胸部レントゲン検査やCT 検査を、もっと積極的にしないのは怠慢だという人がいます。もし、疑われるとした患者さんを撮影したとすると、次の別の患者さんを検査する予定となっても、その人が二次感染しないように、部屋全体を換気するとともに装置をアルコール消毒しなければなりません。その作業は30 分以上、1 時間近く必要となります。アルコールが不足する中、どうすればいいのでしょうか。メディアなどで主張する専門家やコメンテーターは、そのようなことを考えたことがあるでしょうか」

 

「タケコプターくれ」と「さっさとPCR検査をどんどんやれ」というのは似ているんです。タケコプターをくれと言う客はアニメで見たことあるしドローンと似ているんだから「世界中探せばできるだろ」というわけです。でも人間を浮遊させるのにどれくらいのバッテリーが必要で、方向転換するのにどんな技術が必要なのか?」という点に想像力を働かせていない。同様に、「さっさとPCR検査をやればいい」と軽く言う人も、それを1回やるのに検査キット以外にどんな物資が必要でどれだけのマンアワーが必要なのか?ということに想像力を働かせていない。どんどんPCR検査ができるかどうかは、実際に手順や物量を把握している医療従事者の実態を考慮しないと判断できないわけです。

想像力欠如で「やれやれ、やればできる」というのは無責任で危険なんです。言論の自由があるので、個々人が意見を表明するのは自由。ただし専門家ではない人間が、どこかで聞いた話を想像力を働かせずに汚い言葉で強引に押し込もうとするのは危険なんです。特に声のデカい、専門知識はないけど正しいことを言っているように「聞こえる」人が発信を始めるのが一番危ない。日本は80年前の戦争でそれを嫌というほど思い知ったはずです。

私のような外野は医療従事者を邪魔しないように応援する。手を洗ってうがいをしてマスクをする。それだけです。物事が間違った方に向かわないようにするには、黙っていたほうがいいこともあるのです。

 

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執筆者:


  1. アバター deds より:

    発展途上国でさえ日本より多くやってる技術なのにタケコプターとはどういうことかねw

    • chandra11 chandra11 より:

      コメントありがとうございます。

      発展途上国で多くやってるんでしたっけ?探せばあるかもしれませんが実績がね・・・。実績ないのに「これで飛べまっせ」と納めても、墜落したら訴訟されますからね。。。

  2. アバター deds より:

    検査抑える方針で走ってしまったので、方針変えると前後の数の整合性がとれなくなるので致し方なく検査抑えたままにしているんだと思うけどね
    ただ医者からこのままじゃもたないとつつかれていたしかたなく検査増やすことになりそうな感じに見える。

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