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アベノマスク回収の悲哀 | 急いでやると爆死する

投稿日:2020年4月26日 更新日:




 

政府が国民に配布するマスク(アベノマスク)に汚れが見つかった問題を受けて、興和と伊藤忠商事が未配布分を全量回収すると発表しました。日経の記事から引用。

伊藤忠商事は海外の衣料品縫製工場を活用して布マスクを緊急生産。工場での生産時に加え、海外からの輸出前と日本への輸入後の3度にわたり全量を検品するよう、チェック体制を強化するという。興和は海外の協力工場への指導を強化するとともに、日本国内で全量検品を行う。

布マスクは介護施設や妊婦向けに2000万枚、全世帯向けに1億3000万枚を政府が調達。1世帯2枚ずつ配布する計画で、東京都内で17日から配布が始まった。

全世帯向けマスクは計3社が受注し、このうち伊藤忠と興和が供給したマスクの一部から黄ばみや黒ずみなどの汚れが見つかった。

厚労省によると、妊婦向けマスクだけで32都道府県で7870枚(22日時点)の不良品を確認。全世帯向けの布マスクでも不良品の報告が出ていた。

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せっかく配布したのに「何やってんだよ ww」という感じもするが、このマスク配布プロジェクトというのは、なかなか難易度が高く、「自分がもしマスク生産を受注したら」という観点で考えると、なかなか考えさせられるものがある。

 

「マスク生産を受注して期限内に政府に納入する」というのは一つのプロジェクトとして捉えることができる。このプロジェクトの難しさはなんだろうか?全容が分からないので憶測も入ってしまうが、こんな感じだと思う。

(1) 納期が短い。国内のマスク不足が大きな問題となっていたこともあり、政府から「なんとしても急いで納入してほしい」と発破をかけられていた可能性がある。

(2) 生産工場の確保が難しい。世界中でコロナウイルス感染が拡大しているので、平時よりも運転を止めたり生産能力を止めたりしている工場が多かったように思う。そうすると国内外で品質が高いマスクを安定して生産できる工場を探し出すのが難しくなる。

(3) 受注枚数が多い。請負各社の受注枚数は数千万枚くらいになる。受注枚数が多いということは、製造や梱包の仮定で欠陥が入る可能性が高くなる。

(4) 清潔さが求められる。マスクは人が顔を覆うのに使うので、当然ながら清潔さが求められる。工場製品ならたとえ汚れようが拭き取ればいいので、大きな問題にならないが、白いマスクならちょっとした汚れがクレームにつながる。

(5) 国民が注目している。国内のマスク不足と政府が国民に配るという異例の事態なので、メディアでも大きくハイライトされている。国民の注目が大きければ大きいほど、納期遅れや欠陥品の混入は平時よりも何倍も大きくハイライトされる。つまり何か問題が起きたときの追及が大きい。

 

(1)~(4)の「納期が短い」「工場の確保が難しい」「受注量が多い」「清潔さが求められる」は独立した要素ではなくて、相互に影響する要素であることが分かる。納期が短ければ、清潔なものを大量生産するのは難しくなるし、普段マスク生産に特化していないような工場で生産するとしたら、なおさら難しくなる。

(5)の要素も見逃せない。国民が注目すればするほど品質基準 (=欠陥率の低下)を高く設定したほうがいい。欠陥率を低く設定するということは製品の検査率は増えるので、やはり納期が長くなる。

あくまで憶測にすぎないけども、伊藤忠商事や興和は政府から要請を受けて「国難だから是非やらせて頂きます!」と安請負いしてやってしまったのかもしれない。今回の依頼を成功に終わらせることで、今後も政府から緊急時にマスクとかの物資納入を受注するためのキッカケ作りにしたかったのかもしれない。私はマスク生産に詳しくはないが、これだけ日本中で不足していることから推測するに、おそらく簡単にできることではない。だから上で挙げたようにこのプロジェクトは(1)~(5)の難しい要素があって、これらをどうやって潰していくかの検証が必要なのだ。

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このプロジェクトは伊藤忠にとっては全然オイしくない案件だったと思う。伊藤忠の年間売上高は数兆円だが、この案件の受注額は20億円程度。小規模なので甘く見ていたのかもしれないが、前述に挙げた(5) 国民が注目している の要素が入っているので、小規模な割には難易度が高いプロジェクト。マスク回収費用がかかるのでプロジェクトとしては利益ゼロか赤字になると思うが、会社としては大きな損失にはならないだろう。だが、それ以上に国民に対してマイナスのイメージを植えてしまった。多くの人は「マスク生産なんて大した事業じゃないでしょ」と考えているので、伊藤忠や興和はこの問題のせいでプロジェクト遂行能力が疑われるからだ。「まともなマスクすら生産できないのか」と。企業としてこういうイメージをもたれるのは・・・辛い・・・。

これはあくまで私の経験だが、顧客や関係者から何かを急ぎでやれと言われてやると、たいていはミスる。人から何かを頼まれたら、「それがどれくらい難しいか」と「どうすれば実現可能か」をしっかり検証してから着手しよう、ということか。アベノマスク回収騒動は、相手が政府だろうが安請け合いすると爆死するという、いい事例になると思う。

 

 

全然関係ないけど、この安全保護帽子の女性が気になる。

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