資産運用 金融工学

リスクの時間分散効果というウソ。長期投資でリスクを低減できない理由。

投稿日:2020年11月21日 更新日:




 

リスク資産は短期でもつよりも長期で持つ方がリスクが下がるという説明がされることがあります。これには色々議論があるようですが、私は間違いだと思っています。

長期投資でリスクが下がることを説明したのが下のグラフです。みずほ信託銀行のサイトから引用。年率リターン8%、リスク(標準偏差) 20%のリスク資産 (TOPIXを想定)して投資期間に対する年率のリターンと年率のリスクを示したものです。この図をみれば年率リターンが一定でリスクが小さくなっていくことが分かります。

この図を見ておかしいと思いませんか?だって、検証対象のポートフォリオは1年当たりのリターンが8%、リスクが20%だと仮定してグラフを作っているのに、なぜか1年当たりのリスクが減るという結論になっています。何かがおかしい。

そこで1年当たりのリスク (標準偏差)の計算方法を見てみると、投資期間T年間のリスクをT年で割って1年当たりのリスク、として計算していることが分かります。

ちょっと待てと。標準偏差というのは「値がどれくらいばらつくか」を示す指標です。なぜそれを投資期間で割って1年当たりの標準偏差を出すのでしょうか?例えば投資期間が20年だとして、標準偏差が60%となって、1年当たりの標準偏差は3%です、ということに意味はあるのか?

 

 

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こういうときは株価変動モデルの式に立ち返って考えなおしたほうがいいと思います。株価は「一定方向に動く」と「ランダムに動く」と仮定すると対数正規分布に従います。そして投資期間に対するトータル・リターンの平均値と標準偏差を計算することができます。式はこの記事を参照。

リスク7%、リターン20%で株価が変動するS&P500のトータルリターンの平均値と標準偏差を示したのが次の図です。

時間が経過するほど平均値と標準偏差は大きくなることが分かります。

もう少しイメージしやすいように平均値に標準偏差を重ねた図を示します。見やすくするために5, 10, 15, 20年後だけ重ねています。これは何を意味しているかというと、オレンジ色の曲線で示す平均値に対して黄色の帯の幅だけばらつくということです。正確に言えば帯は68%の確率でこの範囲に分布するという意味です。)

これを見れば明確でしょう。トータルリターンに対するリスク (標準偏差)は時間が経過するほど明らかに大きくなります。

冒頭に示した「リスクの時間分散効果」を示した図は、(おそらく)トータルリターンの標準偏差を投資期間で割った値を以て、時間分散できていると主張しているんでしょう。繰り返して言えば、私は投資期間で割ることに意味を感じません。

例えば図の20年後に着目すると、「初年度に100万円投資すると20年後の平均値は300万円で、ただし200万円~400万円の間に分布する」ことを意味しているのです。でも大丈夫。200万円~400万円の幅200万円を投資期間の20年でわると、1年当たり10万円でしかない。リスクは低い。こういわれて誰が納得するでしょうか?しませんよね ww

もっと投資家目線で考えてみればいいんです。私がS&P500に投資するとして20年先を想像したときに何が気がかりなのかといえば、20年後のトータルリターンの平均値と標準偏差なのであって、それ以上でもそれ以下でもないんです。

そう考えればリスク (標準偏差)を投資期間で割って1年当たりに直したものは何の意味も持たないということになります。だから、長期投資でリスクを低減できる、というのは間違いだし、あのグラフはミスリードさせるものだと感じています。

 

 

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