お客様は神様です。
この言葉をよく聞きます。ですが顧客が外国人、特に欧米人だとこれは必ずしもあてはまりません。
「契約書は神様です」の方が正しでしょう。契約書に書いていることが全て、契約書を読まないヤツはマヌケ、契約外のことをホイホイやるのはバカというのが外国人の考え方です。ただし、契約書の解釈の相違によるコンフリクトはどうしても起きてしまうので、そこはウェットな関係を地道に築くことで解決を図るとうわけです。
顧客との議論が白熱してくると、珍しい言葉を浴びせられることがあります。私が今まで浴びせられた衝撃の言葉を紹介します ww
おまえが正しいと思う理由を10個言え。俺を納得させろ。
by ロジカルな米国人のオッサン
外国人はとにかくWhy? を連発してきます。そして「おれはこう思う。何故なら・・・」をとにかくキャッチボールのように投げ合うわけです。そこで黙ると負けです。沈黙は相手の主張を受け入れたとみなされます。中には、理由を10個言え、なんて押してくるオッサンもいます。まあ時間くれと言って一旦退散した後、2個理由言ったら許してくれましたが ww
I really, really don’t like that.
by うるさい米国人のオッサン
外国人(特に米国人)はとにかくストレート。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。くだらない提案をもっていくと、「嫌いだ」と一蹴されます。これを言われると結構こたえますよ ww
おまえの議事録は全然ダメだ!代わりに俺が書いてやるわ!
by 短気な米国人のオッサン
書いてくれるのか ww 上司かよ ww
契約重視の外国人は、基本的に全ての合意事項を書き物で残そうとします。「口頭の合意は合意とみなさない」と言っても過言ではありません。私が議事録を書くのが下手だった若手のころ、頑張って書いた議事録にサインをもらいに行ったときに浴びせられたのがこの言葉です ww
ただしこのオッサンの議事録はそれまで見たことがないほど簡潔で、ロジカルで、誰が見ても内容を理解できるような素晴らしい構成だったので心底驚きました。それ以来、私はこのオッサンの議事録の書き方を真似るようになりました。ただし、自分とは利害関係が異なる人に好き勝手に議事録を書かせるのは要注意です。こちらに不利な記録を残される可能性があるので。
おまえならもっとできるはずだ。もっと頑張れ!
by 短期な米国人のオッサン
体育教師 ww または松岡修三 ww 契約書の内容が厳しすぎて、第三者をどうしても説得できないときに何とか要求を緩和できないか相談した時に浴びせられた言葉です。契約はいったん合意したら覆すのが非常に難しい。「契約書は神様」なんだから、履行できるようにひたすら頑張れ!というわけです。
は?契約通りやれよ?チャレンジしてくんな。
by 超細かいインド人のオッサン
チャレンジという言葉には「挑戦する」という意味の他に「異議を申し立てる」という意味もあります。契約に書いていることが非現実的なのを指摘した際に浴びせられた言葉です。契約通りにできないとか今更言うなよ、というわけです。問答無用ですね。
ただし、ここで折れては負けです。何回も粘れば主張を聞いてくれることがあります。いったん断られても粘り強くアプローチすることが肝心です。ちなみに私はこのオッサンに5回目のアプローチで、「ダメだ。何回も言わせんな。」と言われて退散しましたが ww
おまえ高校生だろ?こんなとこをウロウロすんな。ちゃんと高校行け!
by 超テキトーな米国人のオッサン
日本人は若く見られます。私が新卒のときに米国人のオッサンに浴びせられた言葉です。相手も挑発してきているので、「HAHAHA、冗談やめてくれよ。私は社会人だよ?君の息子よりは若く見えるかもしれないけどね。」的なノリで返したら、ちゃんと納得して話を聞いてくれました ww 高圧的なオッサンはジャブをかましてくるので、慌てずにユーモアで乗り切るのが肝要です。
大丈夫、人は誰でもミスするもんさ。
by 短気な米国人のオッサン
あなたは父か ww 私が仕事でミスをして謝罪したときにかけられた言葉です。実は、相手は前述の議事録のオッサンです。「大丈夫。人は誰でもミスをするんだ。だからミスの内容とリカバリーする方法を議事録に残そう」と優しく言われた後に、「おまえの議事録は全然ダメだ!」と怒られたわけです ww 今思えばこんなんでよく仕事できたな、と思います。
以上が外国人の顧客から浴びせられた衝撃の言葉集です。私は日本人の顧客は担当したことがないですが、契約に書いていないことを無理やり押し込んでくるうえに、「言うこと聞かないなら今後は仕事あげませんよ?」的なノリらしので、日本人は勘弁してほしいです ww
ちなみに、「契約文化」と「働き方」は密接に関係していると思っています。例えば日本の場合、契約に基づいて義務を果たすという考え方が欧米に比べて弱い。すると顧客とサービス提供者の間に厳しい上下関係が形成されるため、顧客がつけあがって無理難題を押し付ける傾向が高い。すると無理難題に答えるために多くの人が長時間労働したり、ストレスを感じたりする。
一方で欧米の場合は契約に基づいて義務を果たすという考え方なので、「契約に書かれたことは全力でやります。プロですから。でも契約に書いてないことはやりません。やってほしけりゃまずは契約を改訂してください。そして金払ってください。」というわけです。契約に基づいて義務を果たす限り、顧客とサービス提供者はフェアな関係であるべき、という考え方ですね。
たまに日本の居酒屋で、お通しで金取られた欧米人(特にドイツ人 ww)がブチ切れしていますが、これも契約文化が根底にあるからだと思います。注文したものに金を払うのが常識で、お通しで金取ることを事前に伝えずにサイレントで金取るとか、ふざけんな、というわけです。金とるなら見えるところに一筆書いておくべきで、コソコソ金とるとかフェアじゃないというわけです。Fully agreed ですよ。私は ww
契約文化は「書かれたことしかやらない」という柔軟性とスピード感に欠くという側面がありますが、契約文化がないと顧客がつけあがってクレームしまくるなどの問題が顕在化してきます。どこからどこまでがサービス提供者の責務なのか曖昧だからです。個人的には契約文化のほうがフェアで性に合っていますね。
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自粛とかもそうだもんな、程度とか考え方が個人に任されるので非常に気を使うというか
一見ゆるく見えるが各自のレベルが合わないんでかえって極端な方向に行ってしまう場合もある。
コメントありがとうございます。
コロナウイルス対策での「自粛」に関していうと、
考え方が個人に任せられる場合でも、日本の場合は大きな集団が同じ方向を向く傾向にあります。(良し悪しは別として)同調圧力が強く働くからです。
政府が強制的かつ例外を一切認めないような強い方針をださなくても、「皆で自粛してがまんしよう」空気で乗り切れてしまう。
「日本政府が出した方針がフワフワしたものであるにも関わらずなぜか日本でコロナ感染者・死者が少ない。なぜなんだ??」という問いに対する答えはここにあると思います。
正直、ここまで計算して方針だしてるとしたら政府はかなり凄いと思います。「リーダーシップ」とは、人の特性を把握したうえで、人を強制させずとも良い結果を出す方向に動かすことだからです。「全ての経済活動は禁止だ!」と過激なことをやると経済は大打撃ですが、「飲食店の弁当販売はOK」みたいに、まあ営業しても大丈夫でしょうと空気で判断できるものは生き残れる。
ただし同調圧力に従って意思決定をするのは人の目を気にしながら行動するという意味で、何か気持悪さが残るのは否めないです。
言い古されたことですが、突飛なことや革新的なアイディアがうまれにくい土壌にしてしまうという負の側面もあるでしょう。
そして同調圧力が行き過ぎる場合も危険。「中国はこらしめるべき、米国とは最終決戦すべき」と騒ぎまくった日本の15年戦争なんかいい例でしょう。