日本人は金融リテラシーが低い。
こんな言葉はもう色々なネット記事で言い尽くされている言葉でしょう。
なぜ日本人諸外国に比べて金融リテラシーが低いと言われているいるかというと、OECD (経済協力開発機構)による調査結果で、金融リテラシーに関するクイズ問題で日本人の正答率が低いから、というのがよく紹介される根拠です。
日銀のプレゼン資料によると主要国の中で日本の順位は22位。アジアの中でも香港や韓国よりも低い順位です。日本人が相対的に正答率が低い項目は「インフレ」「複利」「分散投資」だそうです。どれも投資に関する項目ですね。
ところで、こんなふうに思ったことはありませんか?
「金融リテラシーが高い」とは、どういう状態をいうのか?と。
日銀が紹介しているOECDの調査ではペーパーテストで金融リテラシーを評価しています。でも、こういったペーパーテストで高い点を取れること、それがすなわち金融リテラシーが高いと短絡的に考えるのは良くないでしょう。
もちろん知識があることは大切ですが、「インフレ=物の値段が上がる」のように教科書の丸暗記のような知識は実生活で役にたちませんからね。
日銀のサイトにはこう書いています。
金融リテラシーとは、金融やお金に関する知識や判断力のことを指します。・・・すなわち、長い人生を自分らしく、そして何より豊かに暮らしていくためには、お金と賢く付き合うための知識や判断力が、これまで以上に重要になってくるからです
「自分らしく豊かに暮らす」ために必要なお金に関する知識と判断力。かなりモヤっとした書き方です。もう少し具体的に言い換えると、「生まれてから死ぬまで生活に困らない十分な金がある状態」を維持するための知識と判断力、ではないでしょうか。
すると、要はお金の出入りに注目すればいいということになります。こんな感じでしょうか。
図中のQ1とQ2は「収入と支出はいくらか?」ということです。基本的なことなので多くを語る必要はないですが、要はこれらを管理して資産がマイナスにならないように気を付けろ、ということです。
見逃しがちな点、それがQ3の外部要因。特に注意すべきはインフレです。インフレが進むと現金の価値が下がり、すなわち物価が上昇するということ。そして日銀は年2%の物価上昇をターゲットにしています。
現金100万円を銀行口座に入れても1年後には利息を加えて100万100円にしかならないでしょう。でも物価が上昇するということは、100万円で10,000本買えたうまい棒が、1年後には9,800本しか買えなくなる、ということです。
ではどうすればいいか?物価上昇に対抗するためには年利2%を超えて運用するしかありません。だから銀行口座に預けるより金融商品に投資して資産運用した方がよい、ということになるわけです。当然リスクはあります。
そして次に来るのがQ4のリスク資産の利回り。インフレで資産を減らさないためには何に投資すればいいのか?自分は利回り何%で運用したくて、リスク許容度はどれくらいか?そういう話になるわけです。
運用は複利の効果が働くので、長期で運用すればするほど資産を増やすことができます。ただし、価格の変動が大きいと資産の価値の上下も大きい。だからインデックスファンドのような多くの企業の株を混ぜたものに投資をしたほうがリスク分散の観点からは望ましい。
再掲すると、考えるべきは4点。
Q1・Q2「収入と支出の管理」
Q3「外部要因」
Q4「運用利回り」
これらを「インフレ」「利回り」「リスク」「複利」のキーワードを考慮してどう設計していくか?
これを自分の言葉で語れて実践できている状態が、「金融リテラシーが高い状態」だと私は思います。
ただし、ひとつだけ気になる点が。。。
日銀のプレゼン資料によると、”International Survey of Adult Financial Literacy Competencies (2016)”で日本の正答率が22位だと書いています。仕事柄ソースを確認するのが私のクセなのでこの報告書を見てみました。
でもその報告書には”Japan”の単語が出てきません。
日銀は一体何を根拠に日本の順位が低いと言いたかったのでしょうか。
何か裏があるのでしょうか ww