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エンジニアに必要な能力を解説する

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日本の技術力が落ちていると言われている。私は技術系の会社に勤めていますが、経営者は「エンジニアは技術力を磨くべし」という。では、そもそも「技術力」とはいったい何なのか?面白いことに、私の会社では「技術力」という言葉が飛び交うものの、「技術力」とは何かを自分の言葉で語る人はほとんどいない。自分の言葉で語れないということは、それが何か理解できていないのではないだろうか?私はそう思う。

 

 

多くの場合、人が「技術力」という言葉を発するとき、「技術力」を発揮した結果、何ができるか、何をしたいか、という結果の説明に重点が置かれていると思う。例として、「日本は技術力があるから部品の小型化に成功した」「米国のプログラマは技術力があるから難しいコードを書ける」「韓国は技術力があるから半導体生産のコスト削減に成功した」。ではその技術力とは何だろう。STEM (Science Technology Engineering Mathematics)の豊富な知識があることなのか、それを応用する能力があることなのか、はたまた顧客のニーズを理解する能力なのか。

 

 

私が色々な本を読んだ結果、一般的に「エンジニアに必要な能力とはこれだ」と言えるものを書いていく。ここでエンジニアとは「顧客が求めるモノを設計する人」と定義する。特定の業界の人にとっては違和感を感じるかもしれないが、当たらずとも遠からずだと思う。エンジニアに必要な「技術力」は(1)~(4)。そして(5)と(6)を加えた。初めに言っておくと、個人的に一番見落としやすいのは(4)だと思っている。

(1) STEMの知識

(2) 要素技術

(3) 統合能力(インテグレーション)

(4) サプライチェーンの理解

(5) リーダーシップ

(6) マネジメント能力

 

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(1) STEMの知識

大学初年度レベルのSTEM (科学・技術・工学・数学)の知識は必須でしょう。モノを設計するうえでそのモノが正しく機能するかどうか検証するにはSTEMの知識が必要でしょう。例えばエンジンの設計には燃焼工学、電気回路の設計には電子工学、AI設計には行列代数、など。これらの知識は確立されていて曖昧さがないため、エンジニア同士が議論するときの共通言語にもなる。

 

(2) 要素技術

例えば自動車はエンジン、バッテリー、ブレーキ、車体、センサーなど複数の要素技術で組み合わされる。自動運転車ならAI設計の技術も入るだろう。自動車の航続距離を伸ばしたり燃費を良くするには、これらの要素技術を向上させる必要があることはいうまでもないだろう。ただし、自動車のような複雑なものの性能を向上させるには個々の要素技術を「独立させて」向上させるのは正しくない。実は次にあげる統合能力が最も重要になると私は考えている。

 

(3) 統合能力(インテグレーション)

また自動車の設計で例えると、燃費を良くするためにエンジンの性能を向上させたとする。ではその新しいエンジンが大きくて重くなっていたらどうなるか?その場合は自動車全体が重くなって航続距離が短くなる可能性もある。また新しいエンジンを搭載することで振動や騒音が発生しないかとか既存のブレーキが問題なく機能するのか、という検証も必要になる。

つまり顧客の要求に答えて「燃費が良く航続距離が長い自動車を開発する」をやろうとして、各々の要素技術を担当するエンジニアが独立に好き放題やっても、目標を達成できない。だから目標を達成するためには個々の要素技術をどう組み合わせれば良いか判断できる統合能力が必要になる。

自動車のような複雑なモノを開発する会社には全体の設計を統括するエンジニアがいる(はず)で、このエンジニアに統合能力(要素技術を理解し、どう組み合わせるべきか判断できる能力)が必要なのは言うまでもない。同時に要素技術のエンジニアも自分の要素技術が全体のどこに位置づけられるかを理解し、自分の設計の何を変えれば他のエンジニアの何に影響するかを理解するべきだろう。

 

(4) サプライチェーンの理解

上司から「おまえ、そんな仕様書つくって本当にメーカーは製作できんの?もっとよく考えて設計しろや」と罵倒されたことがある。私には一体なにが足りていなかったのか?それは「サプライチェーン」の理解。つまりあるものを製作して顧客に納める際に、自分の設計がそのどこに位置づけられるかを理解していないと、こういうことになる。

例えば製造業のサプライチェーンを書き出してみるとざっくりこんな感じだろう。

最上流には鉱山があり、そこで採掘された金属が素材屋で精錬されて不純物が取り除かれる。精錬された金属は部品屋に運ばれて部品に成型される。様々な部品屋で生産された部品は工場に集められてここでさらに加工されたり、組立される。組み立てて最終製品にする際にはソフトウェアを搭載する場合もある。工場を動かすには電気やガス・水道が必要。組み立てられた製品は検査や梱包を経て商店に出荷され、最終消費者に届く。

頭で書いたように何故私が上司に罵倒されたのか?それは自分の担当する範囲の要素技術にしか目を向けていなかったからだ。視点の狭さは独りよがりになる。例えば製品の機械的強度や耐腐食性能を高めるために特殊な素材を指定するとして、それは紙の上では簡単なことだ。ではサプライチェーンの上流も視点に入れると考えは変わる。そんな特殊な素材を使って部品を成型できる部品屋はいるのか?部品屋にとって特注になるのではないか?特注ということは値段や納期が高くなるのではないか?その特殊素材にレアメタルが入るなら、主な生産国はどこか?政治的な理由で入手が困難にならないか?

また特殊な部品を安定して入手できたとしても自社内でそれを加工する技術はあるのか?最終製品を消費者が使用するときに高温になる場合があるが、高温に晒されても問題ないか?

このようにサプライチェーンを理解することで、自分の設計が他社の設計や調達、製造にどんな影響を与えるのか、そして最終消費者が求めているものを満足させることができるのか、という問いを持つことができる。チェーンの上流を理解することは材料の入手性を理解することだし、チェーンの下流を理解することは売り方や顧客が求めるものを理解することに対応する。チェーンのうち自分の周辺に対する理解は、技術を統合可能かどうかと製品として生産可能かどうかの理解に対応するだろう。(4)の統合技術が要素技術を組み合わせる能力だとすれば、サプライチェーンの理解は、もっと広い視点(顧客の要求、製作可能性、他社への理解、政治的リスクの理解)を持つことだと言える。

 

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(5) リーダーシップ

ここでいうリーダーシップは「目標達成のために他人を動機づけするマインド」と定義する。モノを作るということは一人でできることではなく、分業で行うことになる。一人で生産活動を行うならリーダーシップは不要だが、複数のメンバーで活動を行うなら、リーダーシップは必ず必要になる。(3)(4)で書いたようにエンジニアは自分の要素技術の向上だけに注力しても意味はない。従って、各人の要素技術をどのように組み合わせれば目標(例:新製品を1年以内に開発する)を達成できるかを、マネージャーから押し付けられることなく、各エンジニアが考え、議論し、調整し、実行していく。各人のリーダーシップが必要だと思う。

 

(6) マネジメント能力

さらに優秀なエンジニアになるために、マネジメント能力を挙げたい。ここでいうマネジメント能力とは「目標を達成するために人・モノ・金・時間を管理する科学的手法を駆使する能力」である。プロジェクト・マネジメント能力だと言うと少しイメージしやすくなるかもしれない。マネジメント能力はリーダーシップとごっちゃに理解されることが多いが、これは正しくない。リーダーシップは人を動機づけできる力なのに対して、マネジメント能力は人を管理する能力。もうすこしかみ砕くと、リーダーシップは目標達成ために人を巻き込む力で、マネジメントは目標達成のための科学的手法(計画の立て方、リスク分析、遂行手法、顧客対応、進捗管理)。実は私はPMP (Project Management Professional)の資格をもっているのでこの分野に少し詳しいのだが、それを書くのは別の機会にしたい。

 

ここまで、エンジニアに必要な能力を色々と書いた。簡単にまとめると、

技術力:エンジニアには理系の知識と要素技術をベースに、それらを統合する能力と自分の仕事が社会の生産活動でどこに位置づけられるかを理解する能力

リーダーシップ:目標達成のために他人を巻き込む力

マネジメント能力:目標達成のためにリソースを科学的に管理できる力

 

私の社内にも「あの人はすごい」というエンジニアがいるが、その特徴として、要素技術に対する理解の深さもそうだが、自分の技術の周辺領域への深い理解、世界情勢へのアンテナの張り方、人を巻き込む力、そして人を動かしつつも妥協を許さない管理能力が際立っている。こう考えると私が挙げた(1)~(6)の要素もあながち間違ってはいないと思うがどうだろうか。

 

(1) STEMの知識

(2) 要素技術

(3) 統合能力(インテグレーション)

(4) サプライチェーンの理解

(5) リーダーシップ

(6) マネジメント能力

 

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参考にした本

 

 

 

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