NY原油先物市場で原油価格がマイナスを記録したことが話題になっています。原油先物史上初めての現象です。
マイナス価格が起きているのは、要は売り手が金を払ってでも原油を引き渡したいということ。原油の需要が激減しているので、売り手は原油貯めておくしかないのだが、原油を貯蔵しておくのには金がかかるので早く掃いてしまいたい。
米国で消費される原油はオクラホマ州のクッシングという場所に集められます。米国で生産される原油はクッシングの貯蔵設備に集められ、その後テキサスやルイジアナなどメキシコ湾岸の原油精製設備で処理されます。その後パイプラインネットワークを通して全米の消費地に運ばれる。
下のチャートが原油処理の流れ。Gathering Systemというのは、原油を集めるための設備のこと。井戸から噴き出してくる高圧の原油を減圧したり、ガスと原油を分離したり、各井戸からパイプラインで引っ張ってきた原油を1本のパイプラインに合流させたりするための設備。Gathering Systemで集められた原油は貯蔵設備 (Oil Storage Facility)で貯蔵されます。これがまさにクッシングの貯蔵設備です。
買い手が見つかったら、クッシングからパイプラインでメキシコ湾岸の製油所に送られて精製(Refining)されます。温度や圧力をコントロールすることで原油を蒸留・分離し、触媒で化学反応を起こしたりして、ガソリンやジェットエンジン、芳香族に作りかえるわけです。ここで生成されたものは製品として国内に輸送されたり海外に輸出されたりします。
この写真はクッシングをGoogle mapで見た航空写真。直径100m近くある原油貯蔵タンクがうようよしています。すごい光景です。世界有数の原油集積地というのも頷けます。
写真右側の施設はおそらく分散システム。パイプラインで運ばれてきた原油を空きがある貯蔵タンクに分散するためのものでしょう。
Google mapで見ると、貯蔵タンクのところに原油を扱う業者の名前が出てきます。おそらく彼らが原油を貯蔵するサービスを提供しているのでしょう。ということは原油の売り手は彼らに金を払っているというわけです。いわばレンタル倉庫みたいなものですね。
原油は可燃性なので漏れると危ないし環境問題を引き起こします。だから原油を安全に運び貯蔵することへの社会的責任は重い。安全なオペレーションをするために金がかかる。だから貯蔵費用も結構かかる。だから需要が激減すると原油価格がマイナスになると考えると、分かりやすい。
こちらからランキングに戻れます↓