金融工学

暴落はいつでも起きうる。「売りが売りを呼ぶ」プロセスは2つ。

投稿日:2020年11月23日 更新日:




 

金融工学ではリスクとリターンが分かれば将来のトータルリターンの分布や元本割れ確率などを計算することができます。だから金融工学で使用する株価変動モデルは将来の株価を予想するうえで「実務的には」かなり使えるモデルです。

ところが残念なことに、現実世界では株価の暴落が発生します。そした株価の暴落は株価変動モデルでカバーません。このモデルで将来の株価分布は対数正規分布で表現できますが、その分布で計算した暴落の確率と現実世界で起きた暴落の頻度が合わない。

下のグラフのように、リターンの分布はカーブを描くのに実際は暴落してとびきり低いリターンが出現する確率はカーブの値よりも高い現象が起きているのです。

株価変動モデルで説明できない暴落という現象はどのようにして起きているのか?

 

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私が最近注目している田渕直也氏の著書「最強の教養 不確実性超入門」に暴落が広がるメカニズムが紹介されています。著書によると、暴落は明確な原因なしに起きることがあるが、暴落のプロセスはある程度分かっているようです。

著書で挙げられている暴落プロセスは主に2つです。そのうちの一つが信用取引です。信用取引で株を買う投資家は証券会社から金を借りて株を買うので、レバレッジ効果を利用して自己資金を超えた量の株を買うことができる。

このレバレッジ効果は、利益だけでなく、損失においても同様に効く。・・・お金を貸している証券会社にとっては、投資家自身が用意した自己資金が残っている限り、損失はその自己資金に目減りにつながるだけで、貸したお金の返済には支障が生じない。投資家の自己資金が証券会社にとってのバッファーとなっているのである。

ところが、株価が株価が下がり続けて損失が拡大していくと、やがて投資家の自己資金は底をついて、証券会社が貸したお金の返済原資にまで損失が及ぶようになる。それを防ぐために、証券会社はバッファーとなる自己資金の水準が一定以下になるように常にコントロールしている。つまり、株価が下がって自己資金が目減りし始めると、投資家に自己資金をさらに積み増すように求めるのだ。これが「追証」といわれるものである。

この追証に応じられない投資家は、買っていた株を即座に売却して証券会社に借りたお金を返さなくてはならない・・・株価が一定以上に下がっていくと、追証に応じられない投資家からのやむにやまれぬ売りが増えていくことになるのである。そして、株化が下がったことによって生じたこの売り自体が、新たな株価下落の要因となっていくのである。

そしてもう一つのプロセスはリスク管理を徹底している金融機関による売りです。

プロの投資家は、損失が雪ダルマ式に膨らむことを避けるため、リスク管理のために様々な社内ルールを作っている。たとえば損失が一定水準に達したら、保有しているものをすぐに売却する、というようなものだ。

まて、銀行や証券会社であれば、当局によって保有するリスクの量を一定に収めるように規制を受けている。株価が急激に下落すると、保有株のリスクが大きと判断されて、やはり保有しているものを売らなければならないケースが出てくる。

 

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つまり、株価が何らかの理由で下がったときに、信用取引を使っている投資家は追証に応じられなくなって株を売り、金融機関は社内ルールに従って株を売る。株価がさがれば下がるほど、売らざるを得ない投資家や金融機関がますます増えていき、「売りが売りをよぶ」プロセスが発動するというわけです。キッカケとなる株価の下落はなんでもよく、通常よりたまたま大きく下落するだけで「売りが売りをよぶ」プロセスが発動する可能性もある。

キッカケが何でもよくて、しかも株価下落が加速するプロセスが株式取引の仕組みに存在しているのであれば、いつでも暴落が発生する可能性があるわけです。すると、S&500のトータルリターンをリスク20%、リターン7%で計算するのも、現実を反映していないと言わざるを得ないといえるでしょう。

そうならばリターンのシミュレーションに仮定でもいいので暴落シナリオを組み込むほうがより現実的な結果を得られるのかもしれまん。

 

 

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