チャンドラです。
「大企業の働き方改革 6割の中小企業がしわ寄せで長時間労働に」というニュースが出ています。大企業が働き方改革を進めた結果、中小企業で働いている人たちの労働時間が増えてしまったという内容です。
私の会社は従業員が2000人程度で大企業の中でも規模は小さい方です。それでも大企業や中小企業を相手に色々な資材を発注して完成品をお客さんに納めるという仕事をしています。そんな私の観点からこの問題を考えてみます。
引用:NHK
記事の中では中小企業の方々へのインタビュー記事が出ています。
このうち、長時間労働について尋ねたところ「取引先の大企業から納期を短くするよう求められ、長時間労働になった」と回答した企業が60%に上りました。
背景について、自由記述で尋ねたところ「大企業が働き方改革で残業時間を減らしているため、工程の遅れがでないよう早めに製品を納入するように求められている」といった声が多く寄せられています。
そして中小企業庁が大企業に納期見直しを要請していくとのことです。
中小企業庁では大企業の働き方改革のしわ寄せが下請けに及ばないように、大企業や業界団体に対して、納期の見直しなどの対応を取るよう求めていくことにしています。
大企業の働き方改革が原因なのか??
この記事をみて考えたのは「本当に大企業の働き方改革が中小企業の長時間労働の原因なのか?」ということです。私が勤める会社は上に述べたように中小企業に資材を発注していますが、働き方改革など微塵も進んでいないし、それでも発注先の企業に納期短縮を交渉します。その理由は最上流に位置する私の会社の客の納期短縮が厳しいからです。
私の働く業界では次のように取引が行われます。
実際に中小企業の下にはさらに孫請け企業などが存在しますがここでは省いています。
ポイントはある企業が他の企業に発注する際に入札制度が行われるという点です。私の会社が超大企業から受注するためには他の企業よりも安くて品質が良くて短い納期で納入できるプロポーザルを出さなくてはいけません。何故なら超大企業は低い投資金額で出来るだけ早く事業を開始すると株主に約束しているので、発注先(私たち)に低価格・短納期を要求するからです。しかも私たちの競争相手は価格競争力が高い中国や韓国の企業です。なので私の会社は競争に勝つために、安くて品質のよい企業を世界中から探し出します。
そのような企業を探し出すと、私の会社はそれらの企業に対して安くて品質が良くて短い納期で納入できないか交渉します。もちろん入札制度です。それらの企業から出てきたプロポーザルを品質、値段、納期、財政状況などの観点から厳正に査定し、さらに安くできないか、納期が短くならないか交渉して、発注先を選びます。もちろんこの作業にダラダラ時間をかけていられないので、交渉は厳しさを伴います。
その発注先も私たちに対して安くて短納期でプロポーザルを出しているので、さらに下請けの会社に安くて短納期を要求します。さらに下請けがあれば安くて短納期を要求して・・・が繰り返されます。
業界の構造が原因では?
こう考えると大企業の働き方改革云々はあまり関係なく、本当の原因は上流の企業が低価格・短納期を下流の企業に要求するのが連鎖的に下流に伝わることだと言えます。つまり業界の構造上、下請けは短納期を実現するために必死で働かざるをえないのです。下流の企業が自社しか作れないオンリーワンの技術を持って他に競争相手がいないのなら話は別ですが、他の企業と競争しなければならないのであれば、上流からのプレッシャーを受けるしかありません。
この記事だけを見ると大企業が働き方改革を始めたせいで中小企業が苦しんでいる、と読めます。そうではなくて最上流に位置する超大企業が株主の期待に応えるために、下流に価格と納期のプレッシャーを与え、下流でグローバルな価格と納期の競争が起こるため、下流で皆で苦しむというのが実際に起こっていることだと思います。最上流の超大企業が働き方改革をしているかどうかは分かりませんが、少なくとも株主からのプレッシャーを受けた経営者からのプレッシャーを受けて従業員は必死に働いているはずです。なぜなら株主の期待に応えられないと株価が下がるからです。
つまり超大企業の株主以外は皆プレッシャーを受けているというわけです。
それでは。
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