人から金を貸してと頼まれる人は結構多いようです。そしてそれを後悔する人も。ちなみに私は人に金を絶対貸さないようにしています。まあ親戚や親しい友人に1万円貸してと言われれば考えますが、10万とか100万とかはありえないですね。金の貸し借りはトラブルの元と言いますからね ww
これは思考実験ですが、人から1000万円貸してと頼まれたとします。このときいくら金を貸せばいいのでしょうか? もっと正確にいうと、いくら金を貸せば自分は損しないのでしょうか?
これは相手に返済能力があるのか、あなたは何のために金を貸すのか?など色々な複雑な要素を考える必要があります。話を単純にするために、相手は100%の確率で金を返し、あなたは営利目的で相手に金を貸さないとします。
「現在価値」という考え方があります。よく言われるのが「10年後の100万円と現在の100万円はどちらのほうが価値があるか?」という問いです。答えは現在の100万円です。なぜかというと、あなたは手元の100万円を投資して運用すれば10年後に100万円以上の金を手にすることができる。だから現在の手元の100万円のほうが価値があるというわけです。
こう考えると、「5年後に1000万円返すから今日1000万円貸して」と頼まれてそのまま1000万円貸すのは、イーブンではなくて損するというわけです。
「5年後に1000万円一括で返すから今日1000万円貸して」と言われたら、いくら貸せばあなたは損しないか?これに答えるには現在価値を計算すればいいのです。
現在価値の計算方法はファイナンスの教科書に書いていますが、本を買わなくても色んなサイトに書いています。今回はりそなのサイトから引用します。
PVは現在価値、FVnは将来の価値、iは金利、nは年数。
この場合、求めたいのはPV、FVnは1000万、nは5年です。ここでi (金利)をどう設定するのか。ここがミソだと思います。
個人で金を貸す場合、私は自分が資産運用で目指している金融商品のリターンで設定すればいいと思っています。例えば私の場合はインデックスファンドに投資して年利5%を目標にしているので、ここでは i=5です。(理由は後で説明します)
そうすると、PV=784万円です。従って、1000万円一括で返すと言われたら、784万円しか貸せない、というわけです。
次に「今1000万円かしてほしい。毎年5年間200万円づつ返すから」と言われた場合。いくら貸せばいいでしょうか
この場合も考え方は同じです。ただし上の公式を年ごとに計算して和をとってやる必要があります。
1年後: FVn=200万円、i=5%、n=1
2年後:FVn=200万円、i=5%、n=2
・・・
すると現在価値の総和は866万円だとわかります。だから866万円までしか貸してはいけない。
i (金利)を5%にした理由を説明します。例えば私の場合はインデックスファンドに年利5%を目標として投資しているので、他人に1000万円貸して後から1000万円返されても損するわけです。
貸す場合:将来1000万円戻るだけ
貸さずに投資:1000万円+運用益
つまり他人に貸すと機会損失になるわけです。だからその分を考慮すると、相手に課す金は減らさなければいけない。だからi(金利)に5%を代入しているわけです。
もし切羽詰まった親しい相手から「1000万円貸して」と言われて「現在価値分の784万円しか貸せません」というと、「おまえは金融屋か!」とブチ切れされるかもしれません ww でも仕方ありませんよ。金を借りる人間は金を貸す人間の機会を奪っていることを自覚すべきでしょう。
1点だけ補足します。金利を5%に設定したときにリスクを考えていないことに気づいた方は多いと思います。実際にインデックス投資では10%程度のリスクがあるわけです。すると、「相手に784万円貸して5年後に1000万円返してもらう」という行為は、実は「無リスクで年利5%で運用している」と言い換えることができます。つまり運用先を変えることでリスクを転嫁しているわけです ww これはちょっとセコい ww
そう考えると金利は国債のような無リスク資産に投資するのが一番フェアと言えるでしょう。でも私のようなリスク資産に投資している人が国債と同じ金利で他人に金を貸すことに納得するでしょうか?しないでしょう ww だってそんなものに投資しても金を増やせないんだから。だから自分が投資しているリスク性資産と同じ金利を設定すべきなんです。それで相手が文句を言うなら貸さなければいい。だって貸したら損するんだから ww
まあこれは思考実験なのでこんな方法で金の貸し借りをする人はほとんどいないと思います。ですが、「1000万円貸してと言われてピッタリ1000万円貸すのはイーブンではなくて損する」ということは頭に叩き込んでおいたほうがいいと思います。こういう意識がないと、情で相手に金を貸した結果、自分が損するでしょう。私は嫌です。金を借りる人間が得するような、そんな取引は。
参考:
私が今まで読んだファイナンスの本で一番分かりやすかったのが本書です。投資に関わる現代ポートフォリオ理論も平易に解説しています。参考まで。