人生100年。給料増えない。少子高齢化で社会保険負担は増える。このままでは老後貧困に陥るぞ。現金だけ持ってても資産は増えない。だから投資で資産を増やそう。
どこにでもある謳い文句です。私もこの文句に同感です。私がインデックス投資をやってる理由も現金だけもってて資産は全く増えないし、少子高齢化と社会保険料の増加は止まらないと思うからです。
でも思うんですよ。この謳い文句が行きわたっても、投資人口が大きく増えることはないだろうと。
その理由は次の2つです。(1) そもそもタネ銭が少ない (2) 投資にはリスクがある。
日本人の年収の中央値は20代で300万円、30代で400万円程度です。手取りは収入の8割とすると、手取りの中央値は20代で240万円、30代で320万円。
一人暮らし独身の生活費は月16万円とすると年間の支出は200万円。とすると使わず手元に残るのは20代で40万円、30代で120万円。ちなみに結婚子持ちなら手元に残る金はもっと減るはずです。
手元の金をフルインベストメントできる人間なんてそうはいません。そう考えると、20代で1年間で投資にまわせる金はたかだか10~20万円程度なんですよ。
S&P500に投資するのは王道ですが、それでも1年目に元本割れする確率は40%もあります。元本割れ確率は時間とともに下がりますが、5年目でも30%あります。詳細は過去記事参照:
「損失回避の法則」に従えば投資はリスクより元本割れ確率で議論した方が分かりやすい
ここからです。私が思うのは、投資にまわせる金がたかだか10~20万円程度の人が、元本割れする確率が数十%もあるリスク資産にわざわざ投資するか?ってことなんです。
もちろんドルコスト平均で毎年コツコツ積み立てれば複利効果で資産は増えていくわけですが、人間は短期的目線で物事を見る生き物なんですよ。
10万円をリスク取って投資しても7%のリターンなら手に入るのはたった7,000円。これはあくまで平均値であって、元本割れ確率は40%もあるんだから、なんだか面倒くさそうだし銀行預金でよくね?と思うのが普通でしょう。
じゃあどうすれば投資が普及するか?というと、やはりタネ銭を増やすことが条件だと思います。つまり年収を上げる必要があるんです。年収が上がって投資にまわせる金が増えれば、リターンの絶対値が変わります。
リスク取って10万投資して7千円儲けるのと、100万投資して7万円儲けるのだと、明らかに後者の方がうま味が大きい。うま味を感じるからこそ、やる気が起きるんです。
「投資する人が少ないのは金融リテラシーが低いから」とよくききますが私はそうは思いません。リテラシー云々よりも、そもそも投資のうま味を感じるだけのタネ銭がない。
これが決定的だと思います。短期間でうま味を感じられないことに対して人は動かないんですよ。証券口座開設とかファンド選びとか面倒くさそうなことがあればなおさらです。
では、実際の投資人口は増えているのか?実は増えています。この記事によると投資人口は過去5年で10ポイント上昇したそうです。
では何で投資人口が増えているのかといえば、今は日経平均やS&P500がガッツリ上昇しているからだと思ってます。乗り遅れたら負け的な感じで。
今は日経平均もS&P500が絶好調ですが、理由は超低金利だからであって、もう少し時間が経ったら必ず調整が入ると思います。
株価が下がりだしたら前述の元本割れ確率は高まるので、給料が上がりにくい日本人の投資熱は冷えるでしょう。私の予想では投資始める人は間違いなく減ります。
本来なら株価が下がったら株を買うチャンスだと捉えるべきなんですが、少々損しても大丈夫だと余裕かませるほどの金が手元になければ、怖くてリスクもとれないでしょう。
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チャンドラさん
インデックス投資に興味があり、いろんな方のブログを読み漁っているうちにチャンドラさんのブログに辿り着きました。
金融工学等のわかりやすい解説と、仕事に対する考え方に共感しながら楽しく拝見しています。
私は30代前半女性会社員です。
700万程度の現金をインデックス投資に回したいと考えているのですが、一括投資かドルコスト平均法で少しずつ投入か、悩んでます。
できるだけ早く入金することが複利の力を最大限に活用できる、長期で見れば株価は上がり続ける、とする見方がある一方で
、局所的にみると、2021年中はなんだかんだ株高が続き2022年あたりから下がるのでは?と推測する記事もあり、小分けに投資した方が後悔が少ないかも?とも思ってしまいます。(自分の性格的にはガツンと全額先に入れてスッキリしたいですがw)
ちなみに、自社株を持ち株制度で450万程度保有(今後は年間80万円積立プラス10%奨励金)、生活防衛資金は2年分あり、今後の年間投資目標は200万。2031年に5000万目標。現在独身ですが今後結婚、妊娠、出産を予定しており、不確定要素もあります。
このケースの場合のチャンドラさんのお考えを聞いてみたいです。
突然長々と失礼しました。
ブログを読んでくださりどうもありがとうございます。
質問に回答させて頂きます。
>700万程度の現金をインデックス投資に回したいと考えているのですが、一括投資かドルコスト平均法で少しずつ投入か、悩んでます。
ドルコスト平均法を採用することをお勧めします。以下は理由です。
(1) ご指摘の通り株価は2022年ごろから下がる可能性が高いと思います。その場合、今年に一括投資すると2022年にリターンがマイナスの期間が続く可能性が高く、加えて株価が下がった2022年に資金を投入できるチャンスを逃してしまいます。
(2) では逆に、今投資せずに2022年まで待つという手法もあります。しかし、これもお勧めしません。なぜなら株価が下がらない可能性もあるからです。その場合、投資しなかった2021年の1年間を無駄にしてしまいます。
(3) 今一括投資するか、株価が下がり始めるであろう2022年まで待って一括投資するか。その中間の手法がドルコスト平均と捉えればよいと思います。つまり、2021年も2022年もずーっと一定額を投入し続ける。
(4) 「小分けにした方が後悔は少ないかも?」と感じているのであれば、その方法をとった方がよいと思います。後から後悔してウジウジなやむのが一番精神的にキツイと思いますので。
余談ですが、私もインデックスを開始した2018年夏にまとまった金額があったのですが、一括投資せずにドルコスト平均にしました。一括ケース vs ドルコスト の比較をしてはいませんが、コロナで大暴落したときは(2018年に一括投資していたら投入できなかったであろう)多めの金額を投入し続けることができたので、今ではある程度のリターンを確保することができました。ですからドルコストに決めたことを後悔していません。
参考になれば幸いです。
早速のご回答どうもありがとうございます。
コツコツ投入していって、チャンドラさんのように暴落のタイミングで多少積み増しできる余力を持ちながら過ごす方が、心の余裕が持てるかもしれませんね。
お金の話って近しい人に相談するのはちょっと憚られるので、参考になりました。
今後もブログ更新楽しみにしてます!料理の紹介も好きです。